ウクライナの長距離ドローン攻撃数、ロシアを初めて上回る
ウクライナはドローンによる大規模攻撃を増やしている
■応酬するウクライナ ウクライナはさまざまな長距離攻撃ドローンを開発している。アナリストのH・I・サットンは、軽飛行機を改造したものから特注のジェット推進式攻撃ドローンまで23種類も確認している。大半は、4月に初めて目撃された「排水管ドローン」(部品に工業用プラスチック管などを用いたドローン)のように、外見にこだわらず、できるだけ簡素で安価、かつ有効な仕様になっている。これらのドローンのなかには、ウクライナのスタートアップや募金団体などが公表しているものもあるが、多くは謎に包まれていて、ロシアで回収された残骸でしか知られていない。 防衛業界の関係者の話では、2023年にウクライナでのシャヘド型ドローンの生産数は月に「数十機」のペースだった。ウクライナのドローンによる攻撃も、注目されがちではあったが規模は小さかった。それが一変した。大規模なドローン攻撃が頻繁に行われるようになり、ときには英国製のストームシャドー巡航ミサイルといった、西側の支援国から供与された兵器による攻撃と組み合わせて実施されている。 ウクライナによるドローン攻撃に関する情報は主にロシア側の当局発表ということになる。ウクライナ当局が明かすことはあまりないからだ。ウクライナ空軍はロシア軍によるシャヘドやミサイルに対する迎撃戦闘の戦果を日々発表しているが、ロシアで同様の発表をしている機関はない。ただ、ウクライナ側からの攻撃があった際に、現地の州知事や軍当局が声明を出している。 ロシア国防省は7月5日、ロシア軍がウクライナのドローンを50機撃墜したことを確認したと発表した。以後、9日に38機、11日に75機、18日に33機、20日に26機、22日に80機、27日に20機、29日に41機、31日に19機の撃墜が発表されている。残りの日のうち計11日にも、より少ない数の撃墜が報告されている。 これらの数字は確認できず、実際にウクライナ側から発射されたドローンの数を表しているのかもしれないし、表していないかもしれない。ロシア当局が主張している撃墜率はウクライナ側よりも高いが、ウクライナ側のようなセンサーと迎撃兵器を連携させた対ドローンネットワークが構築されている形跡はない。 こうした注意点を踏まえたうえで、ロシアの政府機関の発表を基に集計すると、ウクライナは7月に長距離ドローン少なくとも524機をロシアに発射した。5月と6月の発射数は200発未満だった。ウクライナ側の長距離ドローン発射数がロシア側の数を上回ったのは初めてだったとみられる。