青木宣親（左）と原田雅章トレーナー＝2011年2月　沖縄・浦添キャンプ

出会ってから、背番号と同じ23年が経った。ヤクルト・青木宣親外野手（42）の専属トレーナーを13年間務めてきた原田雅章氏（63）は、神宮のスタンドから最後の雄姿を見届けた。 【写真】ヤクルト・青木宣親、引退試合で長男が始球式　捕手を務めた青木は愛息と抱き合い涙 「本当に二人三脚だった。それに尽きる。こんなに後輩が慕ってくれる選手はいない。ヤクルトに帰ってきて、花を咲かせて良かった」 早大時代。右肩関節唇の故障に悩んでいた青木は、初めて原田氏の治療院を訪れた。「『治りますか？』と聞いてきたから『（治療を）3回ぐらいやったら結果が出るよ』と言ったら、『本当ですか？』とベットから飛び起きた。そこから23年だよ」と懐かしむ。 思い出に残るのは、2009年の第2回ＷＢＣだ。第2ラウンド前の米サンディエゴでのミニキャンプ中、ボロボロになった青木の体を約6時間治療。結果、大会２連覇を果たし、青木はベストナインに輝いた。原田氏は当初、韓国との決勝前に帰国する予定だったが成田空港でのトラブルで延期に。「君が代を歌うとき、ドジャースタジアムに並ぶノリの姿を見て『ここまで来たんだ』と涙がボロボロこぼれた」と振り返った。 青木は12年にメジャーリーグに挑戦。何度も懇願された原田氏は、治療院を閉めて専属トレーナーとして海を渡った。異国では「戦いの毎日だった」。日本球界復帰後も引退試合の前日まで治療を続け「ノリは2回同じ箇所を痛めたことがない。これは少しだけ自慢していいのかなと」と頬を緩めた。 「リスペクトしてくれたし、大事にしてくれた。本当に感謝だよね。13年間とても幸せな気持ちでやらせてくれた。もちろん〝青木ロス〟はあるけど、『お疲れさん』しかない」。数々の偉業は、決して一人では成し遂げられなかった。