バミューダで産卵し、数千キロも旅をする「ウナギ」の不思議な一生
ウナギの一生は長い
■ウナギの一生は、長くて苦労が多い ウナギの一生は長い(最長50年を生きるものもいる)。そして、この長い一生のあいだに、いくつかの変化をくぐり抜ける。 レプトケファルスと呼ばれるごく小さな透明の幼生として生まれ、数年とは言わないまでも、数カ月のあいだ、海流にのって漂う。そのうちに、成長して美しいシラスウナギになる。シラスウナギもまだおおむね透明だが、成体のウナギの姿に近づきはじめている。 淡水の生態系に到着したら、色素によって黄色みを帯びるようになる。ここで、数十年にわたって餌を食べて成長を続けたあと、抗えない力に導かれてサルガッソ海へ戻る。その長い旅の途中に、ウナギは黄色から銀色に変わり、ようやく生殖腺を発達させはじめる。 この旅は並大抵のものではない。そのあいだに、ウナギは文字どおり胃を液化し、事実上、体内から自分を食いつぶして、生殖器官を発達させる余地をつくる。産卵したら、すぐに死ぬ。 ウナギの適応力はものすごい。体を波打たせて泳ぎ、前方にも後方にも進むことができる。皮膚呼吸ができるため、短い時間なら、水がほとんどない湿った場所でも生き延びられる。海、淡水、陸の生態系を移動できる数少ない動物の1つだ。 ハナヒゲウツボのようなウナギ目のいくつかの種は、まずはオスになり、成熟するとメスに変わる。環境にいるオスとメスの数によって、どちらかの性別に変化できる種もいる。 ウナギは、食物連鎖の重要な一部であり、健全な生態系を維持するためには欠かせない。魚、甲殻類、蠕虫(ぜんちゅう)類を食べる一方で、鳥や大型の魚、さらには哺乳類にとっては貴重な食物源になる。 その順応性の高さにもかかわらず、乱獲や、生息場所の消滅、水域の汚染といった大きな脅威の圧迫されているせいで、ウナギの個体数は減少している(ヨーロッパウナギ、アメリカウナギ、ニホンウナギはすべて、国際自然保護連合によって絶滅危惧種とされている)。
Scott Travers