週刊・新聞レビュー(12・24)「オバマ大統領の記念づくり 米、キューバの国交回復なるか」徳山喜雄
解説を載せたのは朝日、産経、日経
キューバといえば、何を連想するだろうか。『老人と海』、ブエノ・ビスタ・ソシアル・クラブ、キューバ危機、フィデル・カストロ、野球……人によってさまざまだろう。 俳優の三船敏郎や博物学者の南方熊楠を思い浮かべたのなら、なかなかの雑学博士だ。 米政府は12月17日、外交関係が途絶えていたキューバと国交正常化に向けた交渉をはじめると発表した。両国は1961年から断交状態にあり、半世紀以上のときを経て歩み寄ることになる。 キューバを「テロ支援国家」と指定、孤立化を図ってきた米国にとっては、重大な政策転換となる。 朝刊の締め切り間際に飛び込んできたニュースで、在京各紙ともに都心を中心に配達する18日朝刊・最終版の掲載になった。そんななかで、ニュースの本記だけでなく、なぜ関係改善に動きだしたのか、解説記事を載せたのは朝日、産経、日経新聞だった。 3紙の解説をみてみよう。 朝日は両国の経済関係に着目、「米国の経済界や民間団体などが、キューバを訪問し、『時代遅れ』の経済制裁をなくすよう、米国政府に働きかけていた」とし、「キューバは、米国企業に魅力的なマーケットだった。今、ロシアや欧州、ブラジルなど南米の企業が進出するなか、みすみす手をこまねいて損をするのは自分たちだ、という焦りが見え隠れする」と読み解いた。 産経は、ウクライナ情勢などで米国との関係が悪化するロシアにフォーカスをあて、「ロシアが対米戦略の観点から、再びキューバに接近することへの懸念」から関係改善を模索してきたとした。目と鼻の先に位置する中南米は米国の「裏庭」にあたり、「柔らかい脇腹」とも称され、センシティブな地域になる。 日経は、背景に(1)オバマ大統領の在任中の「レガシー(政治的な遺産)」づくり、(2)中南米を結ぶ地政学的な重要性、(3)米国内で増加するキューバ系移民の政治的な影響力――の3点の理由があるとし、包括的に両国の接近を解説、読み応えのあるものにしていた。 オバマ氏の任期は残り2年で内政ははかばかしくない。外交に目を向けてのレガシーづくりは、なるほどと思える。「中国も中南米に積極的な進出をうかがっている」との指摘も目配りが効いている。