週刊・新聞レビュー(12・24)「オバマ大統領の記念づくり 米、キューバの国交回復なるか」徳山喜雄
在京紙すべてが1面コラムに
在京紙の6紙すべてが翌12月19日朝刊に、米国、キューバの国交交渉にちなんだ1面コラムを書いた。アーネスト・ヘミングウェーの『老人と海』にふれたのが、読売、日経、産経の3紙だった。偶然に過ぎないが、この3紙はいずれも東京・大手町に本社がある。 読売の「編集手帳」は、「小説の海のように、敵意と敵意の織りなす緊張がようやく疲れて眠りに就く時刻を迎えたらしい」とし、「経済を立て直したいキューバと、後世に何か成果を残したい米オバマ政権と、双方の思惑はあれ、歓迎していい動きだろう」とした。日経の「春秋」もやはりレガシーづくりにふれ、「オバマ米大統領は残り2年の任期を飾る記念がほしいのだ」とした。 ヘミングウェーは「実は人生の後半生の22年間をキューバで過ごしている」。1961年に両国は断交したが、ヘミングウェーはその年に米国で「猟銃自殺を遂げた」と産経の「産経抄」は伝える。 朝日の「天声人語」は、ドイツのヴィム・ベンダース監督の映画「ブエノ・ビスタ・ソシアル・クラブ」を取り上げ、「こんな格好いいおじいさんが世の中にはいるんだ」と書きだした。ドキュメンタリー映画で描かれたキューバの老演奏家たちだ。ラテンの音楽が聞こえてくるようでもある。 「1961年に公開された黒沢明監督の『用心棒』で、三船敏郎さん演じる浪人のモデルは、実はキューバの英雄カストロ氏ではなかろうか」という珍説を披露したのは、東京の「筆洗」だ。 毎日の「余録」も「博物学者の南方熊楠は1891年にスペインの植民地キューバを訪れ、独立戦争の革命軍で戦ったとの伝説がある」と東京に負けない珍説を紹介した。 もちろん東京も毎日も記事に「落ち」はある。(2014年12月23日) ※この批評は東京本社発行の最終版をもとにしています。 ----------------- 徳山喜雄(とくやま・よしお) 新聞記者。近著に『安倍官邸と報道―「二極化する報道」の危機』(集英社新書)。