脱EVシフトが始まる!? 欧州でなかなかEVが普及しない特殊な事情とは?「敵は炭素ではなく温室効果ガス」と知るべき
今後の脱EVシフトの行方とは
日本でもなかなか普及が進まない電気自動車(EV)ですが、世界的にみてもその販売は鈍化がみられています。そこで脱EVシフトの流れが注目されはじめていますが、実際のところはどうなのでしょうか。解説していきます。 【画像】脱EVシフトはどうなる? EVと関連写真を見る(13枚)
エンジン車の時代が続くことはない?
世界的な電気自動車(EV)販売の鈍化がみえ、踊り場的な様相から、脱エンジンの方向性が見直されるのではないかとの見解がある。しかし、それは誤りだ。 EVメーカーを目指すドイツのメルセデス・ベンツが、プラグインハイブリッド(PHEV)の販売を2030年以降も継続するとの報道があり、取り沙汰された。しかし、2023年8月に来日したメルセデス・ベンツのオラ・ケレニウス会長は、記者会見で「乗用車の将来はEVにある」と断言したうえで、「当面は、PHEVの販売を補完的に行う」とも述べているのである。 同時に、マルチパスウェイ(複数の経路)に対するコメントを求められたのに対し、「水素や合成燃料の道もあるのかもしれないが、乗用車に適しているのはEV」と明言した。また、BYDなどを視野に、新興勢力への対応を聞かれると、「われわれは価格競争に組み込まれるつもりはなく、ブランドと技術で世界の最先端であることを目指す」と答えたのであった。 したがって、メルセデス・ベンツがたとえ新しいエンジン開発を行うとしても、それは高効率な発電用エンジンと解釈すべきで、エンジン車の時代が続くことではない。
高級車や上級車種に限られていたEV
EV販売が踊り場的状況にある背景は、欧州が、上級車種を先にEV化してきたからといえる。大多数の消費者にとって手ごろで身近なEV開発が遅れた。理由は、バッテリー原価の高さが取り沙汰されるが、そればかりではない。 欧州は、二酸化炭素(CO2)排出量規制で95g/kmを達成しなければならない現状がある。それを満たすには、燃費の悪い高級車や大柄で重いSUVなどを先にEV化しなければならない。そうしなければ課徴金が科せられ、採算が合わなくなる。ことに、プレミアムブランドと称するメーカーは、その傾向が強い。 とはいえ、高級車や大柄な上級車種を購入できる消費者の数は限られる。そこで、EV販売は一時的に鈍化するのだ。 この先、たとえば日本の日産「サクラ」や三菱「eKクロスEV」のような250万円くらいで買えるEVが数多く出まわるようになれば、一気にEV化する可能性がある。また、EVを一度体験すれば、快適で壮快、小型車でも上質な走りを得られることに気づき、急速に広がるだろう。