四国の山中にヒマラヤ民謡?ネパール人労働者激増、12万人来日の背景は 川下りやホテル、空港、食肉処理まで…新たな裏方に【移民社会にっぽん】
これに先立ち、日本ではインド料理店で働くネパール人が独立して料金の安いインド・ネパール料理店を次々と開店していた。新店を開けば、従業員として親族や知人らを招くことができ、仲介料の利益も生まれる。東京や名古屋など大都市ではネパール食材店も増加し、仲介業者など就労のネットワークが拡大した。 ネパールのカレースープ「ダル」に用いる香草ジンブーは、東京でも簡単に買える状況になっている。2022年の外国人労働者数でネパール人はベトナム、中国、フィリピン、ブラジルに続く5位となっており、存在感は高まるばかりだ。 ▽料理上手の少数民族 ネパールは英語教育が盛んで、出稼ぎのために語学を磨く人が多い。夏休みシーズンの成田国際空港では、日本語と英語を操り、旅客案内や片付けで働くネパール人職員がいた。カトマンズ出身の職員は「自分の休暇では富士山に登りたい」と笑いながら話した。新型コロナウイルス禍から回復基調にあるホテルや旅館でもネパール人スタッフを見かけるようになった。
避暑地・長野県茅野市の「ちのステーションホテル」の受付で今年8月、社員のエリナ・パラズリさん(28)が「いらっしゃいませ」と明るくあいさつしていた。エリナさんは2017年に仙台市の日本語学校に留学、専門学校を経て2年前に就職した。ホテルを選んだのは「コンビニのアルバイトで接客が好きになった」からだという。 茅野市の白樺湖周辺にある「池の平ホテル&リゾーツ」も職員12人がネパール人だ。ホテル内の料理店で働くネパール人シェフは、かつてアフガニスタンでも働いていたと振り返った。グルカ兵の歴史を通じた出稼ぎネットワークを感じさせる。 珍しいところでは、料理上手の少数民族としてネパールで知られている「タカリ」も来日している。今年7月には東京都江東区で、その食肉処理技術を生かした恒例のバーベキュー大会が在日タカリ協会の主催で開かれ、近隣の日本人住人らと交流した。協会によると、日本には約500人のタカリが住み、うち100人ほどが東京で食肉処理業に従事している。あるタカリの男性は「最近は牛がどんどん大きくなっており、処理には特殊な技術が必要」と胸を張った。男性が働く食肉処理関連会社の従業員は9割が外国人だという。