澤穂希「“ゾーン”に入った最初で最後の瞬間でした」初優勝した「ワールドカップ ドイツ大会」での“劇的同点弾”を回顧
◆2011年「FIFAワールドカップドイツ大会」を回顧
藤木:この番組では、澤さんにゆかりのあるゲストも出演していらっしゃいます。そのなかで、2011年のワールドカップ優勝メンバーの宮間あやさんが(当番組に出演した際)「ドイツ入りした日に、澤さんが『あや、この大会で優勝する気がする』と予言してビックリした」とおっしゃっていましたが、ご自身では覚えていらっしゃいますか? 澤:はい、あやと一緒に散歩をしていたときに言った記憶があります。 藤木:そういう予言めいたことは、よく言われるのですか? それとも、そのときにたまたま降りてきたんですか? 澤:今はそこまでではないですが、昔から第六感が働くことが多々あって、その当時も、なぜかは分からないですけれど、チームの雰囲気、みんなのコンディションの良さ、チームワーク、団結力とか……何か流れに沿っていくと“このチームだったら優勝できる”“今しかない!”と思ったんです。 藤木:アスリートは活躍できる年齢も限られていますし、もし叶えられるんだったら“この大会がチャンスだ”と思ったのでしょうか。 澤:それもありましたし“このメンバーで絶対に優勝したい!”とも思いました。本当にずっと苦楽を一緒にして戦ってきたメンバーでしたし、家族以上に一緒にいた時間が長かったので。“このチームのために自分は全力を出し切れる”と思えたメンバーでしたね。 藤木:それだけ思い入れのあるチームで実際に優勝できて、その喜びは相当なものだったのではないですか? 澤:当時の自分の人生のなかで一番うれしかった瞬間でしたね。ワールドカップで優勝することが本当に夢であり目標だったので、世界一になれた日は本当に夢の時間でした。表彰式とかが終わって、打ち上げをして30分だけ寝られる時間があったんですけど、起きたときにメダルが横にあって“やっぱり夢じゃなかったんだ!”って(笑)。それくらいアドレナリンも出ていましたし、大興奮でした。 藤木:決勝のアメリカ戦で(延長後半での同点ゴールを決めた)宮間さんのコーナーキックからの(澤さんの)シュート! 映像で何回観てもどうやってシュートを打っているのかが分からないんですが、どうやって決めたんですか? 澤:(笑)。でも、あのシーンって実は宮間のスーパー(プレー)なんですよ。最後の最後まで(状況を)見て、自分が走るコースに(ボールが来るように)蹴っているんです。それって本当に難しいことで、もう“点で合わせる”というか……私の思惑は、高さのあるアメリカにヘディングでは絶対に勝てないと思ったので、ああいう速いボールで、ニアサイドで日本ならではの俊敏性を効かせたら、どこかに当たって、それでコースが変わって(そのこぼれ球を)誰かが入れてくれたらいいな、と思って蹴ったんです。 藤木:じゃあ、ご自身で決めるというよりは“ゴール前に流し込めれば”ぐらいのイメージ? 澤:そうですね。コースを変えて……と思ったら入っていて“うわ~!”みたいな(笑)。実際は最後ワンバック選手に当たってコースが変わったんですけど、あれこそ、アスリートでいう“ゾーン”に入った瞬間でした。物事が全部スローに見えて……言葉で言うのが難しいんですけど(笑)。 藤木:ゾーンに入る体験って、そうそうないんじゃないですか? 澤:あれが最初で最後です。ただ、その1回が決勝のあのゴールで良かったです。本当にサッカーの神様からの贈り物でしたね。でもあれは、本当にみんなの気持ちが入った得点でした。私だけではなく、女子サッカーに携わってきてくれたすべての人たちの思いがあったからこそ、あのゴールが生まれたと思っています。 (TOKYO FM「SPORTS BEAT supported by TOYOTA」より)