LDHで初の『24時間テレビ』帯企画出演の快挙。35歳の活躍が“テレビ史に残る”といっても過言ではないワケ
テレビ・芸能史が動いた瞬間
筆者が以前、縁あって世界的バレエダンサー草刈民代と食事をしたとき、「もっと努力しなければ」という主旨の発言を耳にして驚いたことがある。世界中のカンパニーの大舞台を経験してきた草刈さんに「努力」の必要性を説かれてしまったら、いったい、ぼくらはその何倍必要なんだと。 単純にもっと上を目指す。好きを超越し、未踏の領域で日々鍛錬を続けるプロフェッショナルたちすべてに共通する感覚だろう。ダンスのジャンルは違えど、アメリカのストリートに根差すクランプの世界に魅せられ、日本の地で技を磨いてきた岩田もまた常に上を目指してきたプロフェッショナルのひとり。 LDHに所属するアーティストとして初めて24時間テレビの帯企画に出演する事実は、CL(LDHが独自の動画コンテンツを配信するサブスクリプション)のLIVE CASTで「これはほんとに大きなことなんです」と本人も感嘆まじりに言っていたように、日本のテレビ・芸能史が動いた瞬間に違いない。 でも当人ではないぼくらがいたずらに騒ぎ立てるのは野暮な話でもある。同番組に出演するまでの彼の努力、向上心、そしてその過程自体をバックストーリーとして確認しておかなければ今回の出演の真価は問えないと筆者は考えている。
そもそも絵を描く人として認識されたのはいつから?
三代目JSBのパフォーマー、俳優、ソロアーティストという主に3つの肩書き(本人は三足の草鞋と表現)を持つ岩田剛典が、そもそも絵を描く人として世の中ではっきり認識されるようになったのはいつからだったか? きっかけは『誰も知らない明石家さんま』(日本テレビ、2020年放送)に出演したことだった。番組の主旨は、MC明石家さんまが画商に扮して一般公募した作家たちを発掘し、その作品の買い手を「明石家画廊」で見つけるというもの。岩田の作品もこの機会にテレビで初公開された。 カンバスに描き込まれ、立ち上がる岩田の作品は、細密画のように繊細で、彼の画家としての才能をひと目で理解させる一級品だった。監修として出演する画商からは「名前を隠しても100万円で売れる」とお墨付き。 三足の草鞋に画家という肩書きもここで追加してしまう。他のアーティスト活動同様に、絵画世界にも興味の赴くままに触手を伸ばしてみたら、自然と作品化してしまったみたいな。そういう軽妙さと肩肘はらない制作態度。岩田剛典にとっての絵画とは、好きと努力を超越した先にある自由な空間そのものではないかと思う。