三上博史「反面教師で構わない…あんなダサいことは絶対したくないというのでも。本気でやってるのは見せないと」 20年ぶりに歌う、伝説のヘドウィグ
本気でやっていることが伝わる喜び
――今“ヘドウィグ”を求めている人に、何か伝えたいメッセージはありますか? とにかく「大丈夫だから! きれいに生きよう、みんな!」と伝えたい。「きれいに生きよう」って、難しい言葉なのですが、僕がずっと思っていること。残りの人生、きれいに生きたいんですよ。妬んだりひがんだり、これ以上に自分を汚したくなくて……。「それは理想論かもしれないけど大丈夫!」ということを、この舞台で最終的に届けたいかな。まあ、3分5分歌ったところで難しいかもしれないですが、「そんなに傷だらけにならなくていいじゃん」と伝えたい。気づかないうちに、にっちもさっちもいかなくなることも多いから。 ――それは20年前よりも今気づいた、ということですか? そう、今だから思うことかもしれない。20年前はもっとギラギラしていたし、そんなことは思わなかったです。今はそういうのは全然ないです。 ――人の目が気にならなくなったということでしょうか。 なんていうのかな……揺さぶりたい、というのはあります。反面教師で構わないんですよ。「あんなダサいことは絶対したくない」というのでもいいんです。違う道を見つけてくれればそれでもいい。でも本気でやってますよ、というのは見せないとですね。 今年1月、寺山修司没後40年記念公演『三上博史 歌劇 ―私さえも、私自身がつくり出した一片の物語の主人公にすぎない―』に出演したとき、寺山の膨大な世界をどうやって表現すればいいか、すごく悩みました。公演が始まってからもずっと揺れ動いていて。観に来てくれた友達は「すごい良かったよ」と言ってくれたけど、俺に向かって「最低だよね」とは言えないですもんね。 すると、ちょっとした知り合いの方が、舞台を観た後に「観ていてこの人、信用できるなと思った」と感想をくれたんです。「ああ、やってて良かった。自分はちゃんとやってるんだ。伝わったんだ」と思って………。(涙を拭い、一拍おいて)それで気持ちがラクになったんです。今回、そこまできちんと務められるのか、という不安はあります。やはり気力と体力が要るので。 ――今回のライブで目指したいことは? オリジナルのお芝居の中ではヘドウィグは怒ったりわめいたり嫉妬したりしているけど、脚本を読んでも最後はほとんど芝居はないんですよ。そこはもう音楽で表現できるから、“みんなたち”をヘドウィグの世界へ連れていきたいです。 ◇ ◇ 三上博史さんが出演し、ロックバンド「アングリーインチ」が演奏する、PARCO PRODUCE 2024『HIROSHI MIKAMI/HEDWIG AND THE ANGRY INCH【LIVE】』は、2024年11月26日~12月8日 に東京・PARCO劇場で上演。その後、12月14日・15日に京都劇場、12月18日に仙台PIT、12月21日・22日に福岡・キャナルシティ劇場で上演される。 ※注『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』 ジョン・キャメロン・ミッチェルが台本・主演、スティーヴン・トラスクが作詞・作曲を手掛け、1997年にオフ・ブロードウェイでミュージカル化。2001年に映画化。これまで日本では、三上博史に続いて、山本耕史、森山未來、浦井健治、丸山隆平が演じている。 愛と自由を得るために性転換手術をしたものの失敗し、「怒りの1インチ(アングリーインチ)」が残ってしまったヘドウィグ。男でも女でもない、一体自分は何者なのか――。ステージ上でロックシンガーが一人語りをしながら、アイデンティティーの探求、愛の渇望を驚くようなビジュアルで歌い上げる舞台は、ときに挑発的、ときにユーモラスで、観る人の心をとらえて離さない。 ヘアメイク:赤間賢次郎(KiKi inc.) スタイリング:勝見宜人(Koa Hole inc.) (まいどなニュース/Lmaga.jpニュース特約・小野寺 亜紀)
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