ヒズボラ「ポケベル一斉爆発」 戦闘激化のタイミングで「指揮命令系統を一気に破壊」
公安調査庁の「国際テロリズム要覧」によると、レバノンを拠点とする「ヒズボラ」の戦闘員は約4万5000人。イスラエル殲滅(せんめつ)を掲げ、同国やその支援国にテロを繰り返してきた。当然、イスラエル側の報復も苛烈を極める。
そのヒズボラのメンバーが所持するポケベルが一斉に爆発したのは、現地時間9月17日午後3時45分のこと。死者12人、約2800人が負傷する事態となった。イスラエル政府は認めていないが、ロイターなどの報道機関によると、実行したのはモサド(イスラエル諜報特務庁)だという。
携帯電話ではなくポケベルで
「ポケベルにはコンピューターウイルスが仕込まれており、特定の信号を受けると、コンデンサーからバッテリーへ一気に電流が流れる仕掛けになっていました。バッテリーには “ペンスリット”と呼ばれる爆薬が混ぜてあり、これはTNT火薬の約1.6倍の破壊力があります」(外信部デスク) ヒズボラの最高指導者・ナスララ師は位置が特定される携帯電話ではなくポケベルで連絡を取り合うように指示を出しており、これを察知したモサドがポケベルに工作を施してヒズボラに供給したといわれている。 「表向きポケベルは台湾製ですが、実際にはハンガリーの会社『BAC』によるライセンス生産。このBACはモサドによるダミー企業だったとみられています」(同)
このタイミングで……
翌日にはヒズボラのメンバーが所持するトランシーバーが爆発しており、これもモサドが関与しているといわれる。イスラエルとヒズボラの戦闘は昨年10月から激しくなっているが、日本大学危機管理学部の小谷賢教授によると、 「(モサドの仕業だとすれば)このタイミングでヒズボラの指揮命令系統を一気に破壊するために行われたものでしょう」 通信機を使っての攻撃は、1996年にシン・ベト(イスラエル総保安庁)がハマスの爆弾製造の専門家、ヤヒヤ・アヤシュを爆殺した事例がある。わが国は、対岸の火事を決め込んでいられるのだろうか。国際ジャーナリストの山田敏弘氏が言うのだ。 「今回はイスラエルの“報復”という動機が具体的になった事件です。しかし、日本でも通信機を使った犯罪は詐欺などの形で日々発生しており、改造については関心が払われていません。これが外国からの暴力に変わる可能性は常にある。いずれサイバーテロを防ぐための組織も必要になるかもしれません」 「週刊新潮」2024年10月3日号 掲載
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