「ハイブリッド版」が真打ち? アバルト500e 長期テスト(最終) 短距離メインの通勤急行!
積算1万610km 大好きだとは即答しにくい
アバルト500eを取り囲む環境は、この半年で大きく変化した。発売当初は、唯一といえる電動ホットハッチといえた。しかし今では、ミニ・クーパー SEとアルピーヌA290が登場。フォルクスワーゲンも、ポロ GTIを置き換えるバッテリーEVを開発中だとか。 【写真】短距離メインの通勤急行! アバルト500e 競合の小さな電動ハッチ フィアットの500eも (174枚) 2024年9月には、フィアット500eとアバルト500eは一時的に生産がストップしてもいた。バッテリーEVの需要が、期待ほど伸びていないためだ。このクラスとしては価格が高めで、航続距離が長くはない、モデル自体の訴求力にも関係はあるだろう。 長期テストでアバルト500eと数か月をともにしてきた筆者も、まだ印象の整理には迷いがある。運転は間違いなく楽しい。見た目もチャーミングだ。でも、このクルマが大好きか?と聞かれると、イエスとは即答しにくい。 好きな部分は沢山ある。アシッド・グリーンのボディカラーは少し奇抜だが、毎朝笑顔にしてくれる。立体駐車場から、キビキビと脱出できる。信号ダッシュでは、ポルシェ911にも負けない。 操縦性も悪くない。最近もベントレー・ベンテイガやランドローバー・ディフェンダー 130、ポルシェ・タイカン、BMW i5 ツーリングなどへ試乗したが、どれも小柄で機敏なアバルト500eの印象を際立たせた。それぞれ、強みはあるとしても。 一方で、お値段はフィアット500eより高く、内装に特別感は薄い。低い速度域では、アクセルレスポンスが過敏すぎる。回生ブレーキの効きも、意図するよりだいぶ強い。
実際にはさほど困らなかった航続距離
郊外の道を、気持ちよく駆け回れたことは間違いない。混雑した市街地でも、スルスルと進むことができる。狭い駐車スペースにも滑り込めた。 長いとはいえない航続距離も、実際に乗ってみるとそこまで困ることはなかった。都心からさほど離れていない場所で暮らす筆者の場合、基本的に1度に走る距離は150kmもない。コーヒーが好きだから、長距離ドライブの時は休憩を挟む回数も多い。 駆動用バッテリーに優しい、温かい季節なら、1度の充電で1週間の通勤と週末の買い物を賄うことはできた。遠くを目指す時は、30分の充電休憩を行程に挟めば充分だった。 急速充電は最大85kWと速いわけではないが、駆動用バッテリーの容量が小さいため、1時間も待つ必要はなし。自宅のコンセントでも充電はできる。もし距離を長く乗らず、ゆったりと生活しているなら、急速充電器なしでも一緒に暮らせるだろう。 ただし、セカンドカーの域は脱しないと思う。残りの航続距離が10km程度で自宅に辿り着き、充電を初めてすぐに実家へ戻る急用が生じた、といった場面には対応できない。