季節のトラベラー【10選】雪と氷のイリュージョン!
冬しか出合えないからこそ、寒さを耐えてでも見たい景色がある。きらきらと輝く白銀の世界。そこには美しさと儚さ、そして人間が抗うことのできない自然界の超越した厳しさがつまっている。今回は日本の豪雪地帯から北極圏まで、雪と氷が織りなす神秘の光景を探しに行こう。
降り積もる雪は天空からのメッセージ⁉
雪は天から送られた手紙である。これは、世界ではじめて人工雪の結晶を作ることに成功した物理学者・中谷宇吉郎が、生前に残した言葉。なんともロマンチックなフレーズだが、科学的にも理由がちゃんとある。上空の気象条件(主に気温と水蒸気の過飽和度)によって、降雪の有無や結晶の形が決まるため、地上に降った雪を見れば上空の様子がわかる。それを“手紙”と表現したのだ。 今回紹介した雪や氷の絶景も、ある特定の気象条件に由来するものがほとんど。たとえば氷柱は雪が溶けて水滴となり、再び寒さで凍りついたもの。長く伸びるには寒暖が繰り返される必要がある。樹氷は気温や風速、湿気といった気象に加えて、そこに自生する植物や地面の傾斜といった地学的な条件も欠かせない。 ちなみに雪景色を幻想的に彩るオーロラは、太陽から放出される太陽風(プラズマ粒子)が、地球の大気と衝突して発光する放電現象。太陽の活動が活発な時期ほどオーロラが出現し、2023年12月には強い太陽風が発生した影響で、普段はアラスカやシベリアあたりでしか見られないオーロラが、20年ぶりに北海道でも肉眼で観測された。中谷の言葉を借りるなら“太陽からの手紙”が北海道にまで届いたのだろう。目の前の幻想的な雪景色が、宇宙とも繋がっている。天空からの特別な手紙を受け取ったら、凍てつく寒さも忘れられそうだ。
【01】ノイシュヴァンシュタイン城/ドイツ
“白鳥城”の愛称で親しまれ、中世の面影を感じさせる佇まいだが、建造は意外にも近代の19世紀後半。2024年2月に開催される“さっぽろ雪まつり”ではこちらの城の大雪像を制作することが決定しており、実物の5分の1サイズ、高さは約13m(台座含む)になる予定だ。