障害者「就労の場」が危機 国の報酬引き下げ県内にも影響 8事業所が閉鎖、83人退職
全国の共同作業所などでつくる「きょうされん」熊本支部は今年4~5月、県内34のA型事業所にアンケートを実施した。報酬改定によって、12事業所が減収を見込み、うち7事業所が閉鎖を検討していると答えた。「定員を3割以上減らした」「このままでは利用者の仕事場がなくなる」との声もあったという。 福島貴志支部長(61)は「自立を強制せずに働ける環境を用意することが大事。『もっと働け』『もっと効率的に』では就労継続支援とはいえない」と指摘する。国による報酬の増額のほか、自治体や企業は就労事業所への業務委託を積極的に進めるよう訴える。 熊本学園大の高林秀明教授(地域福祉論)は「就労支援に収益による競争原理を持ち込むと、もはや福祉政策とは言えない」と批判し、企業による障害者の法定雇用率の順守など「社会全体で障害者が働ける受け皿をつくるべきだ」と強調する。(丸山伸太郎) ◆生活が突然崩れた…当事者、家族に戸惑い
「やりがいを感じて働いてきたのに、生活が突然崩れた」。国の報酬改定で働く機会を制限され、熊本県内の就労継続支援A型事業所に通う当事者や家族は戸惑いを隠せない。 熊本市中央区のカフェレストラン「みなみのかぜ」で働き始めて5年目となる男性(37)は「勤務時間が急に半分になると聞いて、とても驚いた」と話す。これまで休憩を含めて午前9時から午後2時まで働き、レストランの開店準備や店頭販売を担当してきた。4月からは勤務時間は徐々に減り、今では1日2時間で給料も半分になった。 男性は「常連もいて楽しみだった店頭販売ができなくなった。職員が何でも相談に乗ってくれるので、できるだけ長く働きたい」と訴える。 軽度の知的障害と心臓病がある熊本市の男性(28)は、ギョーザの製造部門で9年前から働く。分量通りに正確に作ったり、時間内にギョーザを包めるようになるまで1年半ぐらいかかったが、丁寧に教えてもらったおかげで、今は他人に指導できるほどだ。苦手だった金銭の計算も徐々にできるようになった。