<リベンジの春・’23センバツ>チーム紹介/下 クラーク 隙のないチームへ 投打成長 「全国」に自信 /北海道
◇強豪に敗戦、意識変え特訓 よどみない口調が、自信を物語っていた。「全国でも通用するはずだ」。エース右腕・新岡歩輝主将(2年)は27日、センバツ出場決定後、報道陣に甲子園での活躍を誓った。 「エースで打順も上位。負担がかからないように主将は降りたらどうか」。佐々木啓司監督(66)は昨秋の全道大会を前に「フル稼働」する新岡を気遣って、声を掛けた。しかし、新岡は助言を退け、「自分がチームを背負う」と決意を伝えた。 その責任感がチームをまとめたと佐々木監督はみる。全道大会を連覇した後のインタビューで今回の優勝の要因として、迷わず「新岡」の名前を挙げた。「新岡の投手力は昨年(2021年)の山中・辻田コンビを上回るかもしれない。良い投手がいたら早々は負けない」と信頼を寄せる。 新岡は全道大会で圧巻のパフォーマンスをみせた。4試合で被安打18、自責点1、奪三振数24と相手を寄せ付けない投球でチームを勝利に導いた。だが、続く明治神宮大会(22年11月)は初戦(2回戦)の大阪桐蔭戦で12失点。制球力が持ち味の新岡だったが、全国屈指の強豪校を相手に「どこに投げても打たれるなと思った」と振り返る。 この敗戦が糧になった。「全国で勝ち進む強豪の実力を肌で感じた」という新岡は自身の課題と向き合った。この冬は球速を上げることにフォーカスし、投げ込んでいる。制球力に「球のキレ」が加わったことで「次、甲子園で大阪桐蔭と対戦すれば抑えられる自信がある」と言い切る。佐々木監督も「負けはしたが、新岡の投球は全国でも通用すると再確認できた」と前向きだ。 明治神宮大会での敗戦はほかの選手たちの意識も変えた。麻原草太(2年)は「まず体つきから違うと実感した」と言う。チームは練習に筋力トレーニングを多く取り込み、フィジカル強化に専念。選手たちは昨秋から平均で3~4キロほど体重を増加させた。麻原は「打撃練習でスイングの強度や打球の飛距離も上がっている」と話す。中村光琉(2年)も「体重は5キロほど増えた。ミート力にパワーが付いて打撃に自信がついた」。多くの選手が特訓の成果を実感しているようだ。 佐々木監督は「新岡の投手力だけに頼るわけにいかない。やはり打撃力も必要だ」と語る。筋力トレーニングだけでなく、素振りやマシン打撃練習に多くの時間を割いた。1日の練習で3~4時間はティーバッティングでなく、「生きた球」を打つ。クラークは明治神宮大会後、投打で隙(すき)のないチームへと生まれ変わりつつある。 選考委員会から2日後の29日、チームは早速、強化合宿のため、三重県へと飛び立った。目指すは「甲子園で初勝利」。そして、その先のまだ見ぬ景色へ……。センバツまで残り1カ月半。クラークのリベンジが始まる。【金将来】