小泉氏が「夫婦別姓」に踏み込めば、石破氏は「金融所得課税」強化に言及…自民総裁選で“国民目線”の政策論争が展開されるウラ事情
石破氏VS小泉氏VS高市氏
「これに反論したのは小泉さんです。3日に都内で記者団に『貯蓄から投資への歯車がようやく動き出した。今、この流れに水を差すような金融所得課税を議論するタイミングではない』と否定的な見解を示したのです。この問題には高市さんも参戦し、13日にBSテレ東『日経ニュース プラス9』に出演すると、『金融所得課税の引き上げは物価安定目標のインフレ率2%を達成後に実施する』との考えを明らかにしました」(同・記者) 世間の注目を集めた公約は他にもある。加藤勝信氏は10日の出馬会見で「最優先で推し進めたいことは国民の所得倍増だ」と言明。林芳正氏は7日に視察先で、現行の保険証が12月に新規発行が停止されることに触れ、「不安を解消するために見直しを含めて適切に対応していきたい」と発言した。ただし林氏は後に発言を修正した。 複数の候補者が見直しに言及した政策課題もある。高齢化社会の進展で、社会保険料の現役世代の負担が過度なものになっているとの指摘を受けて河野太郎氏、小林鷹之氏、加藤勝信氏などが何らかの見直しを表明している。 「角福戦争」など、昭和の自民党総裁選は、あくまでも派閥と派閥の“権力闘争”がメインだった。さらに派閥間に政策の違いが少なかったこともあり、候補者が政策論争を行うことは稀だった。
「国民を向く」必要性
近年は原発や安全保障の問題を巡って候補者間の論争が起きたこともあったが、今回の総裁選は「より国民に身近な政策」で議論が活発化している。政治アナリストの伊藤惇夫氏は「長い自民党総裁選の歴史でも、極めて珍しいのではないでしょうか」と言う。 「大量立候補による思わぬ副産物、だと考えられます。合計9人という数ですから、討論会では各候補が喋るだけという展開になる可能性が高く、候補者間での論争は起きにくいと考えられます。どの候補者も討論会での“得点”は難しいと判断し、とにかく早めに公約を公表し、世間の注目を集める戦略を採用しているのです。さらに公約が国民に身近な内容になっているのは、自民党の裏金事件が大きな影響を与えています」 もうお忘れの方も多いかもしれないが、6月21日に国会が事実上の閉会になると岸田文雄首相は記者会見に臨み、総裁選の出馬に意欲を見せていた。 「しかし裏金事件で国民の怒りは強く、追い詰められた岸田さんは総裁選の出馬を断念しました。そのため自民党は『国民を意識し、国民にアピールする』総裁選を実施する必要に迫られたのです。特に党内基盤が脆弱だったり、世論調査で知名度が低かったりする候補者は“尖った政策”を発表して国民の関心を集めようとしています。税や社会保険料について言及し、国民負担の軽減を訴える候補者が散見される理由です」(同・伊藤氏)