女性をめぐるアレコレに思いを馳せたくなる3作。
『メイ・ディセンバー ゆれる真実』 トッド・ヘインズ(監)
36歳のグレイシーは、家族ある身ながらバイト先で出会った13歳のジョーと不純異性交遊に及び、実刑判決を下される。しかも、彼の子を孕っていたグレイシーは、獄中出産し、服役後に2人は結婚……という23年前の事件に基づく映画で、グレイシーを演じることになった女優エリザベスは、参考のために2人のもとを訪れる。この幾重にも張り巡らされたレイヤー(なんせこの事件自体が実話を元にしている)を強調するのが、鏡を効果的に使った演出だ。とりわけエリザベスとグレイシーが、娘のプロム衣装を買いに行くシーンの常軌を逸した異様さ! 7月12日より公開。 7月はこんな映画を観ようかな。
『Shirley シャーリイ』 ジョゼフィン・デッカー(監)
アメリカのゴシック作家、シャーリイ・ジャクスンの伝記映画だ。舞台は1948年。彼女と夫スタンリーの住む家を、若夫婦のフレッドとローズが間借りすることになる。近所で起こった少女失踪事件に基づく小説の執筆に悪戦苦闘していたシャーリイと、彼女をなし崩し的に世話することになったローズは、紆余曲折を経ながらも、やがてガールフッドを築いていくだろう。このとき、ローズと失踪した少女はときに、シャーリイの分身のように見えるのが印象的だ。であるがゆえ、書き終えたシャーリイの顔の孤独なアップからは、いろんな意味を読み取りたくなる。それも含めて、シャーリイを演じたエリザベス・モスの顔の演技が素晴らしい。7月5日より公開。
『HOW TO HAVE SEX』 モリー・マニング・ウォーカー(監)
仲良しのかしまし3人娘のタラ、スカイ、エムは、卒業旅行ではっちゃけるべくクレタ島のリゾート地マリアに降り立つ。『ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』よろしく馬鹿騒ぎをするのはもちろん、タラには果たさねばならぬ目的があった。それは他の2人に遅れをとったロストバージンをここで体験すること。というとハーモニー・コリンの傑作『スプリング・ブレイカー』を想起するかもしれないが、さにあらず。本作はその後、現代社会に巣食う問題にも触れていく。その意味で、アップデートされた『スプリング・ブレイカー』と言えるかも。7月19日より公開。 text: Keisuke Kagiwada
POPEYE Web