上司の心得はやっぱり聞き上手であること? 部下の才能を引き出すオートクライン効果
「オートクライン効果」とは、医学用語で「自己分泌」を意味する用語ですが、コーチングにおいては自分が話した内容を自分で聞き、自らの潜在的な欲求・考えに気づくことを意味します。考えながら話す、聞きながら考えるといった状態で会話がなされることは珍しくありません。話し相手から気づきを促されることもあれば、自分自身の発言を聞きながら気づくこともあります。自分で話して自分で気づくという作用はまさに「自己分泌」です。
ティーチングよりコーチング? 今、マネジャーが身に付けたい傾聴力
ブレインストーミングや1on1などで発散的に話しているとき、「今、話しながら考えたのですが……」というフレーズを使ったことがある人は多いのではないでしょうか。あるアイデアについて、頭の中にとどめているときと、いざ言葉にしてみたときでは、捉え方が変わることがあります。口に出し、その情報を俯瞰 (ふかん)して捉えることで、新たに生まれる感情や考えがあるのです。 昨今、コーチングが広く注目されていますが、オートクラインを目的にしていると言っても過言ではありません。コーチングでは、コーチが受け手(クライアント)に質問し、対話を重ねていくことで、受け手が自主的に「答え」を見つけられるよう支援します。具体的な答えを持ち合わせていない人中から、答えを「引き出す」ことを目的とする場合はコーチングが適しています。 目的によって、取るべき手段は変わります。新入社員の育成など、答えを「伝える」ことを目的にする場合は、例えば教師から生徒へ、上司から部下へ、知識や情報などの「答え」を伝える「ティーチング」という手法が適しています。 コーチングでは、受け手が自分で気づくことを目指します。ただし、人は自分の欲求に気づいていなかったり、気づいていても無いものとしていたりすることがあります。そのような顕在化されていない欲求を表に出すために必要なのが「質問」です。コーチが傾聴し、質問を重ねることで、「自分で話しながら気づいた」というオートクラインを目指すのです。 企業での人材育成において、かつてのような単線型のキャリアではなく、従業員による自律的なキャリア形成が求められるようになってきています。コーチングスキルは今や、マネジャーに求められる必須スキル。オートクラインによって部下の主体性を引き出すことができれば、チームのパフォーマンス向上につながるでしょう。