「テロの標的に……」”パリ式オペレーション”で参加者ブチギレ!テレビに映らない五輪開会式のリアル
レディ・ガガが歌い踊り、ジダンがナダルに聖火をつなぎ、セリーヌ・ディオンが締めくくる。世界各国のセレブリティたちと独創的な演出に彩られたパリオリンピックの開会式は、やはり壮観だった。 【絶対女王】世界ランク1位に君臨 "凛々しく美しい" フェンシング 江村美咲 だが……。 「会場のオペレーションが全く機能していなかったんです。とくに、選手たちの終着点であり、オリンピック旗が掲揚されるトロカデロ広場はひどかった。ここに訪れたのは、世界各国のメディアやオリンピック協会の関係者と、VIPたちのみ。そんな彼らが、口を揃えて運営に怒りを滲ませていた」(現場を取材した全国紙記者) 問題は、セレモニー開始前から起こっていた。入場者約6000人に対し、セキュリティゲートがわずか2つしか用意されていなかったのだ。 「入口付近には開始3時間前から長蛇の列ができていましたが、それが遅々として進まなかった。途中からは雨が降り始め、イライラを募らせた各国の参加者が英語で『なぜ列が進まないのか』と質問しても、スタッフは『私、英語わからないのよ』と英語で答え、今度はフランス語で質問しても『私、フランス語わからないのよ』とフランス語で笑いながら回答。別のスタッフとは英語やフランス語でおしゃべりに興じていたので、完全に我々はナメられていたのでしょうね」(同前) ついに怒りを爆発させたのが、アメリカの放送局。 「私たちは2時間近く待ってるのよ! もういい加減にして!!!」 女性キャスターの怒声が響き渡ると、背中に”Securite”(セキュリティ)と書かれたTシャツを着ている屈強な男が5名登場。3つ目のセキュリティゲートを開けはじめた。 「『いや、できるんかい(笑)』と思いましたね。さらに驚いたのが、それでも列が進まなかったこと。これほど長時間にわたって人が密集すれば、テロの格好の標的です。開始1時間前になると、さすがに焦りはじめたのか、並んでいる人の半分をセキュリティゲートなしで入場させていました。彼らには取材パスや入場チケットのチェックもなし。 『荷物の少ない人は危険物を持っている可能性が低いので通すことにした』とスタッフは語っていましたが、明らかに大きな荷物を担いでいる人が通過していたり、何も持っていない人がセキュリティゲートを通るように言われていたりともうめちゃくちゃ。そもそも、同日朝に鉄道で破壊行為が行われていたというのに大荷物の人間をスルーするなんてあまりにも不用心です。最初は少人数で捌ききれず、最後は大人数で対応したのにセキュリティがガバガバ。あまりに杜撰なオペレーションでした」(同前) やっとの思いで入場することができた参加者たちを待ち受けていたのは、大雨だった。 「寒さに耐えきれず、一人、また一人とスタンドを後にしていきました。さらに、セーヌ川を船で渡る選手団の様子を映し出すモニターが機材トラブルでブラックアウト。終着点で待っていた我々は、状況もわからずただ待つしかなかった。開会宣言が行われたメインステージには水たまりができてしまい、スタッフが一生懸命水をステージの下に掻き出していたのが印象的でした。外で行われる開会式なのだから、雨くらい想定すればいいのに……」(同前) こうした“パリ式オペレーション”は、開会式以前から随所に見られていた。 「開会式の前日、選手村内部を紹介するためのメディアミーティングが行われるというので行ってみたんです。ところが、予定時間を20分過ぎても担当者が現れず、やっと1人が登場したかと思ったら『今日は人手が足りないからやっぱり中止にすることにしたよ』と言われてしまった。肩すかしを食らった各国の報道陣は困惑し、オランダから来たジャーナリストは『これがパリ式か……』と話していました」(パリ五輪を取材するスポーツ紙記者) とはいえ、運営の“雑さ”が露呈しつつも開会式は滞りなく行われ、世界中の人が魅了されたのも事実だ。 「選手たちも風邪をひかないか心配になるほどずぶ濡れでしたが、終始楽しそうでした。結局、完璧を目指すのではなく、小さな問題は許容しながらも大問題は防ぐというのがミソなんでしょうね。ただ、観衆はド派手な演出を見られても選手の顔はよく見られなかったし、何も起こらなかったというのは結果論。このままでは会期中に何らかの事件が起きてもおかしくない」(前出・全国紙記者) 果たしてパリ五輪は無事閉幕を迎えることができるのか。不安の残る開会式となった。
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