ブラッド・ピットの困り顔が見もの!いまだ現役感堪能できる映画『ブレット・トレイン』
ブラッド・ピットと言えば、数々の代表作に恵まれたハリウッド俳優だ。『オーシャンズ11』では頭のキレる"できる男"として活躍を見せてきたし、『Mr.&Mrs. スミス』では凄腕の殺し屋として戦いやはりクールなかっこよさを堪能できる。 【写真を見る】映画『ブレット・トレイン』のブラッド・ピット 他方、『ブレット・トレイン』では不運な運び屋のレディバグ(てんとう虫)として、様々な困難に陥るブラピを楽しむことができる。 『ブレット・トレイン』は、伊坂幸太郎の小説『マリアビートル』が原作となっており、猛スピードで走る新幹線の中で戦う10人の殺し屋たちの姿が描かれる。ブリーフケースを盗み、次の駅で降りるという簡単な仕事を代理で任されたはずのレディバグだが、次々と不運に見舞われる様子は見ていても滑稽だ。 もちろん、レディバグで殺し屋であることには変わりはないし、いざ戦えば強いのだが、その場にあるブリーフケースや消火器を武器として扱う姿はクールよりもユニークさが勝る。運がいいんだか悪いのだかわからないうちに相手を打ち倒していき、見ていると思わずふふっと吹き出してしまうのが、ブラピ演じるレディバグの楽しみ方なのではないだろうか。 もうひとつ、際立っていたのがブラピの困り顔。作中のレディバグには不運な出来事が次々と起こる。自らのミス由来のものから、全く関係のないものまで様々だが、その際のブラピの「うーん、困った」という顔は見もの。バトルとのギャップもあってか愛嬌あるキャラクターに仕上がっており、次はどうやってこの状況を切り抜けるのだろうとワクワクさせてくれる。 新幹線には他にも多くの殺し屋が同乗しており、その個性豊かな面々も作品に彩りを加えている。中でも、レモン(アーロン・テイラー=ジョンソン)とミカン(ブライアン・タイリー・ヘンリー)のファンになった人は多いのではないだろうか。二人一組の殺し屋で、時に対立して強い言葉を用いながらも、深い友情でつながっている。それが伏線のように端々でわかる構成となっており、血なまぐさい殺伐とした映画の中で温かみを感じさせてくれるポイントとなっている。 もちろん、2人それぞれの戦いっぷりも見逃すことはできない。ともにレディバグと戦い、特に狭い場所での激しいバトルは本作のハイライトのひとつだろう。命を狙い合ったレディバグとレモン&ミカンコンビが、一時共同戦線を張るという物語の構造も見ていて熱くなる瞬間のひとつとなっている。 作品全体として、日本が舞台になっているという前提を忘れてしまうほどに、日本の描写は不思議だ。街にネオンが光り輝くのはアジアの別の国ではと思うし、新幹線の中で乗車券を確認されるという細かい違和感も数多い。海外の人から見た日本のイメージはいまだにこうなのかと首を傾げてしまう。 それでも、アクションコメディとしてしっかり成立しているのはやはり原作の『マリアビートル』が傑作だからだろう。前半から張られていた伏線が後半で線となるシーンもあり、原作とは別の作品と考えた方が楽しめることは確かだが、良さもしっかりと引き継がれている。 すでに還暦を迎えているブラピだが、改めて作品を見直してもいい意味でそんな重厚感は受け取ることができない。B級映画の中で慌て、困り、そして激しく戦う姿はまさに現役そのもので、まだまだ私たちの知っているブラピは拝めるのだなと安心してしまう。2022年公開の『ブレット・トレイン』は最新のブラピ作品のひとつでありながら、これまでのブラピの良さも思い出すことができる良作となっている。 文=まっつ
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