内田篤人のW杯代表復帰への思い。西野ジャパン誕生はどう影響するか?
日本代表の右サイドバックは、酒井宏樹(オリンピック・マルセイユ)が絶対的な居場所を築いている一方で、2番手が長く不在の状態だった。ワールドカップという厳しい戦いに臨むうえで、不慮の故障や出場停止などを考慮した場合、ひとつのポジションに2人は必要となる。 実際、酒井宏を故障で欠いた3月下旬のベルギー遠征では、宇賀神友弥(浦和レッズ)と酒井高徳(ハンブルガーSV)が代役を務めたものの、及第点に達するパフォーマンスを残せなかった。指揮官が代わっても、右サイドバックを取り巻く状況が変わることはない。 J1開幕戦を終えた後に右太もも裏の違和感を訴え、戦線離脱を強いられた内田だったが、実は復帰当初から想定していた故障だった。右ひざの古傷そのものは問題ないが、真剣勝負から長く遠ざかっていた反動が必ず体に起こると覚悟していた。 「小さな筋肉系のけがが、これから多少はあると思うよ。そういうのもケアをして、適当にごまかしながら上手くやっていくしかない」 再復帰まで予想よりも時間を要したものの、今月9日の完全合流後は紅白戦でもプレー。満を持してリーグ戦のピッチに戻ってきたからこそ、立ち止まっているつもりはない。 代表監督交代でチャンスは広がったと思うか――グランパス戦後にこう問われた内田は、首を縦に振って現役選手全員の思いを代弁しながら、こんな言葉を紡いでいる。 「(広く)見てくれると思うよ、オレは。やれるということがわかれば、(自分のことを)気にはしてくれると思う」 淡々とした口調から漏れ伝わってくるのは、2010年の南アフリカ、2014年のブラジル両大会に続く3度目のワールドカップ出場へかける熱き思い。復帰前に30歳になった、知性と強さ、速さを兼ね備えた右サイドバックが静かなるチャレンジを加速させていく。 (文責・藤江直人/スポーツライター)