マレーシアで不法滞在者として扱われる若者の声なき魂の叫び 金馬賞男優賞受賞の感動作「Brotherブラザー 富都のふたり」予告編
マレーシアと台湾で100万人の動員を記録している「Brotherブラザー 富都(プドゥ)のふたり」の予告編が公開された。 クアラルンプールのプドゥ地区にあるスラム街。不法滞在者2世などさまざまな国籍や背景を持つ貧困層の人々が暮らすこの地域で、身分証明書を持たないアバンとアディは兄弟として育った。ろう者のアバンは市場の日雇い仕事で堅実に生計を立てているが、アディは裏社会とつながっており危険と隣りあわせの日常を送っている。そんなある日、アディの実父の所在が判明し身分証明書発行の可能性が出るが、ある事件が兄弟の未来に暗い影を落とす。 聾唖(ろうあ)の兄アバンを演じたのは、台湾の人気俳優ウー・カンレンの演技は高く評価され、台湾のアカデミー賞(金馬奨)で最優秀主演男優賞を獲得したのをはじめ、各映画祭・映画賞の演技賞を独占している。無鉄砲な弟アディを演じたのはマレーシアのスター俳優ジャック・タン。「ミス・アンディ」等の社会派映画の秀作をプロデュースしてきたジン・オングが、本作で監督デビューした。 マレーシア国内に30万人はいるとされている、さまざま事由から身分証明書を与えられず、事実上不法滞在者として扱われ、人権を奪われている人々。この作品ではそうした背景から、兄弟として生きてきた二人の若者の過酷な人生を、スタイリッシュな映像で描き出す。本作はこれまでにも金馬奨、ウディーネ極東映画祭、ニューヨークアジアンフィルムフェスティバルなど、全世界18の映画祭で23の賞に輝いている。 アカデミー賞監督のアン・リーは、主演の兄を演じた俳優ウー・カンレンを「彼のような俳優が台湾にいることは私たちの誇り」と手放しで称賛。また監督のジン・オングに対しても「彼はまさにグレートディレクターだ!」と、初監督作品とは思えない映画の完成度を讃えた。著名人の発言とヒットが引き金となって、マレーシア政府もこの問題を議会に提出するほどまでの動きを見せている。 このほど公開された本予告では、身分証明書もなく身寄りのない兄弟を幼い頃から母の様に支えてきたトランスジェンダーや、二人の身分証明発行に尽力するポランティアの女性などが登場し、過酷な運命に翻弄されながらも健気に支え合う兄弟の愛が感じ取れる編集となっている。 1月31日から、ヒューマントラストシネマ有楽町、シネ・リーブル池袋、テアトル梅田ほかで公開。