「ネグレクト、いじめ、不登校」44歳・モデル美元が語る、その「壮絶な」子ども時代
9歳の子どもが、寒さに耐えながら電話ボックスや屋上で眠る日々
ネグレクトの影響は学校生活にも現れました。まだ9歳の美元さんは洗濯やアイロンがけがうまくできず、給食のテーブルクロスやかっぽう着、体操着がいつもしわくちゃ。「汚い」といじめられました。自分の力だけでは朝も起きられず、遅刻も多い。事情を知らない人に「さぼってる」といじめられてしまう。 「当時9歳だったので、遅刻しないように自分で起きることだけでも大変だったのですが、私の場合は、そもそも安心して眠れる場所がなかったので、いつも寝不足でした。当時、完全に不登校になっていた兄は情緒不安定で攻撃的にもなっていたので、私は家に帰ることができなくて、電話ボックスや屋上で寒さに耐えながら眠ったことも何度もあって」 当時のお風呂は、子どもが一人で沸かすのは危険でした。実際に火傷をしたこともあったので、水道で頭を洗って、タオルで身体を水拭きして学校に行っていたそうです。 「バイ菌が移るからと隣の席の子が机を離したり、掃除のときに誰も机を移動してくれなかったり。そんないじめを、担任の先生は黙認していました。ある日の授業中、班分けで誰も入れてくれずに独りになった私に、先生がみんなの前で『いじめられる側に問題がある』と言いました。必死に学校に通っていましたが、もう限界でした。学校に行くのが怖くなって。朝、せっかく間に合う時間に家を出ても、通学路を行ったりきたりして、結局は休んでしまうようになりました」
「アイロンと冷たいごはん」。そんな子どもの頃のトラウマが、育児の過程で癒やされていきました
こうした経験から、9歳の娘さんに対しては日頃より「多様な選択肢の中からどれをを選んでもいいよ」と伝えているそうです。 「ママは、もっと学校に行きたかった。でも、ママは学校でつらいことがたくさんあったから、本当につらいときは無理しないでいいよ。そんなふうに娘に言えるのは、当時の経験があるからこそだと思います」 先日は娘さんに「アイロンをかけなくてもいいよ」と言われて、驚いたそうです。 「最近の学校のかっぽう着はしわになりにくいのですね(笑)。でも、『ママは、アイロンをかけてもらえなくて悲しかったから、家族のお洋服にアイロンをかけるのはママ自身のこだわりなの。かけてもいい?』と娘に話したら、娘は笑って手伝ってくれたんです。私は、自分が子どものころにしてもらいたくてもかなわなかったことを、娘の子育ての中で昇華させてもらっているのだと、このとき気づかされました」 ある日、美元さんのご友人が娘さんに「ママが、子育てで大切にしていることは何だと思う?」と尋ねたところ、娘さんは「ママって、ごはんがあったかくないとダメなの」と答えたことに美元さんはとても驚いたそう。 「それまで意識していませんでしたが、私、冷たいごはんにトラウマがあったんですね。そんな私を、家族があたたかく見守ってくれていたことに気づきました。いつも独りで冷たいご飯を食べていた私が、娘が生まれてからは独りごはんをしたことが一度もないんです」