日食って裸眼で見ていい?→「太陽グラス」を使おうね
安全だと錯覚してしまう
日食というのは安全という錯覚を生み出すので気をつけなければなりません。 私たちは普段、太陽を見上げることはほとんどありません。実際、目が痛くなりますしね。しかし、日食のときだけはちがいます。月が太陽の大部分を遮るため、太陽を見つめるのが楽になります。そうなると、目を傷つける可能性のある光がほとんどないという誤った印象が生まれます。 そしてこの誤解によって、多くの人が日食用のメガネを外して太陽を見てしまうのです。太陽の強い光がまた現れるタイミングに気づかずに、ずっと見てしまうという結果に陥りす。Benner博士は、これこそリスクのある行動だと述べています。 網膜が損傷してしまう可能性がある この間、網膜は危険にさらされることになります。 Benner博士は「網膜は脳の一部であり、純粋な神経ネットワークです。そして通常、光を見ると、化学反応が起こり、それが電気的反応に変わり、脳に信号を送ります」と説明しています。 網膜の繊細な構造は強い光によって修復不能なほど損傷を受ける可能性もあるそうです。目に入ってくる光線は組織を焼き尽くし、網膜の中で重要な光を感知する細胞と錐体細胞機能を破壊し、炎症や障害を引き起こすことになります。これら細胞が死滅すると、損傷は永久的なものとなり、特に錐体細胞が損傷された場合、色覚にも影響が出てきます。 2013年にCase Reports in Ophthalmological Medicineに発表された症例報告によると、日食網膜症はその症状が微妙で見落とされやすいため、最初は気付かれないことがよくあるそうです。光や熱からの損傷は最初は深刻に見えないことから、診断は難しくなります。見た目にあまり変化がないものの、日食網膜症は目にとっては深刻な状態です。そして、皮膚や角膜上皮とは異なり、網膜の損傷には即座に症状が現れず、永久的な視力の喪失や変化、歪んだ色覚などが後からやってくることが多いのです。 日食網膜症を患っているほとんどの人は、いつ患ったかわかっていないとBenner博士は話しています。損傷は即座に痛みを感じるわけではないため、気付くのが遅れることがあり、例えるなら日焼けのようなもので数時間後に症状が現れるとのことです。病院へ行くと医師が炎症を確認し、神経組織の回復を認める可能性もありますが、眼の神経ネットワークは部分的にしか回復しないことがあります。時間の経過とともに、損傷は瘢痕形成を引き起こし、「視覚の穴」などの視覚障害をもたらす可能性もあるのです。 日食網膜症によるダメージの例 日食網膜症のもっとも重大なダメージは中心視力の喪失です。Benner博士はこの状態を、古い写真のネガフィルムに穴開けパンチで穴を開けることのようだとたとえています。他の影響としては、色覚の永久的な変化、視覚の歪み、光過敏、頭痛などがあります。「その組織が損傷されると、体がそれを修復しようとします。薬はありませんし、治療法もありません。回避策もありません。一度損傷を受けると、治療ができずにずっとそのままなのです」と説明しています。