日本は“安楽死”とどう向き合う? 緩和ケア医「“家族の押し”で決まることはあってはならない」
難病のALSの女性に依頼され殺害した罪などに問われていた医師の裁判で、京都地裁は5日、懲役18年を言い渡した。この事件を受けるなどして関心が高まっているのが「安楽死」だ。 【映像】「生きたいのに背中を押した殺人では」 ALS当事者が訴え 世界では欧米を中心に議論が進み、2002年にはオランダが世界で初めて合法化。いまや年間死者の約5%が安楽死によるものとなっている。その後、ベルギーやカナダの一部の州などが相次いで合法化。カナダでは、生活保護よりも安楽死の手続きのほうが簡単だという報道もあり、物議を醸している。 なかなか議論が進まない日本は安楽死とどう向き合えばいいのか。『ABEMA Prime』で議論した。
■茂木健一郎「安楽死を合法化している国は野蛮だ」
2月、オランダのファン・アフト元首相夫妻の安楽死が大きな話題となった。永寿総合病院がん診療支援・緩和ケアセンター長の廣橋猛氏は「治らない、苦痛が取り切れない、寿命が限られていると複数の医療者が判断する、意思を複数回確認するなど、ちゃんとした要件がある。2人が同時期にというのはとてもレアなケースで、美談的に取り上げるのはいかがなものかという意見もある」と述べる。 緩和ケアの現場では、安楽死を望む患者もいるという。「“もう終わりにしたい”“安楽死は日本でできないんですか”と言う方は少なからずいらっしゃる。ただ、その時の一時的な勢いだったり、問い詰めると確定的ではないだろうと思うこともある」。
一方、脳科学者の茂木健一郎氏は「“安楽死したい”という意思が確定的なものとして認定されるのは意外と大変だ。本人が選ぶという前提自体、専門の立場から言うと極めてあやしい。人は変わるもので、言葉で表しても本当の気持ちはわからない」との見方を示す。 さらに、「安楽死を合法化している国は野蛮だと思う。キリスト教で自殺は罪だと伝統的にみなしてきた一方、日本は武士が切腹していた。文化的な背景としてはヨーロッパのほうがハードルは高い気がするが、なぜ合法化しているのかは疑問だ。また、気になるのは安楽死で見送った方々が5年後、10年後にどういう心理的な変化を得ているのか。PTSDや“あんな選択をさせなければよかった”と思う人はいるのではないか」と疑問を呈した。