「原作改変」実写化の脚本会議で起こる、性別が変わったり原作にいないキャラはこうしてできる?現場の実態を描いた漫画に驚きの声【著者に聞く】
漫画原作をドラマ化、映画化、アニメ化。1人が制作した漫画が、多くの制作者の手によって新しい形として再現される。そこで起きる改変は、どのような理由で起こるのか?のりば(@MangaNoriba)さんが実体験をもとに描いた漫画「なぜ〝原作改変〟は起こるのかの話」を投稿すると、Xでは7.7万のいいね(2024年8月13日時点)がつき、ユーザーからは「こんなことが起きているのか」「妙に納得できてしまう」と、大きな反響を呼んだ。今回は、「いったいなぜこんなことが起こるのか…」現場の実態を知るのりばさんに話を聞いた。 【漫画】「なぜ〝原作改変〟は起こるのか」を読む ■漫画は非現実的で実写化するには改変が必須?原作脚本会議を覗くと... なぜ、アニメが人気になり、実写が廃れていったのか...?そこには、さまざまな思惑が絡まりあっていた。TV番組、映画、ドラマ制作に携わった経験を持つ、のりばさんは現場で行われていく改変を目の当たりにしていた。 プロデューサー、脚本家、監督が集まる脚本会議の現場。まずは、主演俳優の決定が第一条件。監督にキャスティングの決定権があることは少なく、大手芸能事務所の権力で決定することが多い。 現場ではオリジナル作品をやりたいとスタッフたちは切望しているが、視聴率のため、知名度のある原作が起用される。しかし、漫画原作をもとに実写化すると、現実的に難しい要素が出てくる。そこをドラマとしておかしくならないよう、脚本で調整していくのだ。 漫画では、「ヒロインの実家が貧乏なのに弟と妹がいて、学費が払えないと言っているのに四年制の大学に通っているんです。でも、普通なら就職しているでしょ?」と言う。「せめて専門学校とか、短大とか…」そう脚本家が指摘すると、プロデューサーは納得。弟たちは「就職している」設定に変更になった。「視聴者が違和感を持ったらドラマを見てくれないから、言動はどんどん変更していい」と、プロデューサーは言う。リアリティを持たせるために変更することはいいことだと思っているのだ。 ■事務所のバーター調整のために性別を変えたり、原作にいないキャラが出来上がる ――普段は、かなりおもしろいギャグ漫画を描かれていらっしゃいますが、今回「なぜ〝原作改変〟は起こるのかの話」を描いたきっかけや理由があれば教えてください。 私のギャグ漫画も読んでいただき、ありがとうございます。今回は、ドキュメンタリー風の「なぜ〝原作改変〟は起こるのかの話」を制作しました。この作品を制作するきっかけとなったのは、「意外と一般の人々は原作改変について知らないのではないか?」と感じたことでした。私は一時期「漫画の実写化」に多く関わっておりましたので、その経験をもとにお話しできることが少なからずあるのではないかと考え、今回の漫画制作に意義を見出しました。内容については、実際に私が酷いと感じた方の発言をもとに構成しております。 ――どのような現場に携わったことがあるのか、簡単に経歴を教えてください。 そうですね。経歴についてお話しさせていただきますと、私のキャリアはまずCMのCG制作から始まり、その後、TV番組、映画、ドラマのCG制作に携わりました。さらに、ゲーム会社でのゲームCG制作や、遊技機のCG演出制作にも取り組み、アニメのTVシリーズや劇場版の制作にも関わってまいりました。現在は管理職として、現場からは離れております。 ――作品には大きな反響がありましたが、どのように感じていますか? 私自身、厳しい現場があるのは当然のことだと思っていましたが、意外にもXの皆さんが「こんな酷い現場があるのか」と、驚いている様子に私自身が驚きました。もちろん、仕事がしやすい現場もありますが、昭和の時代の価値観がそのまま残っている現場もあります。それと同時に、Xの皆さんの創作に対する多大な愛情を強く感じました。日本の漫画やアニメがこれほど強いのは、こうした支えている方々の存在のおかげだとあらためて感じました。 ――では、漫画「高宮ウォーキング」を描き始めたきっかけはなんでしょうか? 私は趣味で「高宮ウォーキング」を実際に行っているのですが、「その際に感じたことや思ったことを漫画にするのはおもしろいのではないか?」と、思ったことがきっかけです。 ――個人的には、「ソーセージの話」や「砂糖とみりんと醤油と酒の話」など、他愛ないやり取りを描いたギャグ漫画が好きです。のりばさんご自身がお気に入りの作品を教えてください。 ありがとうございます。私もそれらはお気に入りのエピソードです。ほかに気に入っているエピソードとしては、「コント 健康診断」「コント バイトテロ」「パソコンの話」などがあります。ただ、私が気に入っているものは、あまり人気が出ないようです(笑)。 ――今後、描く予定の作品はありますか? たくさんネタはありますが、最近では公開していいものかどうか悩む内容が増えてきました。たとえば、「悪徳不動産業者が弁護士にコテンパンにされた話」「上海の企業と仕事をしたら違法な提案をいろいろされた話」「年に1000万使ってみた話」「大手銀行の中小企業融資担当者がKindleインディーズの収益を増やす方法を考えてみた話」などです。ネタは豊富にありますので、公開した際には、ぜひ読んでいただけるとうれしいです。 漫画は最後に実写化の現場と比較して、アニメの制作現場も描かれる。その温度の差は大きく、アニメの現場では原作をリスペクトした精鋭たちが集う。現場の実態を知らないユーザーたちからは、「おもしろければ文句は少ないよ」「実写化のモヤり感の原因を裏話として漫画にしてくださってありがとうございます」などの声が届く。 取材協力:のりば(@MangaNoriba)