ISSから帰還 宇宙飛行士の油井亀美也さんがトークイベント(全文1)
宇宙ステーションでの温度は? 実験は?
樋江井:たくさんありますね。 油井:はい。で、よく質問を受けるのは、宇宙の中と外の温度の差ですけれども、日が出てるときはすごい温度が高くて、日が陰っちゃうと、夜のほうにいくと非常に冷たい、寒いんですよね。だから日が当たってるときは、色にもよるんですけどね、銀色のああいう形にしておくと、だいたい最大120度ぐらいに表面はなって、で、何もなく日が沈んでしまうと、マイナス150度ぐらいになるということで、この温度差が、90分で1周してますから、90分ごとに熱い温度、寒い温度っていうのが繰り返されるということで、非常に過酷な環境なんですよね。 樋江井:外の気温っていうのは、中には基本的に入ってこない。 油井:そうですね、入ってこないようになってまして、こういう状況では人は生きていけませんから、中はちゃんとエアコンがあって、だいたい22度とか25度とか、その辺はクルーが実は地上にリクエストをして、この温度にしてくださいって言うとそれにしてくれます。 樋江井:ちなみに油井さんの好きな温度って何度だったんですか。 油井:だいたい私は25度ぐらいのところが好きなんですけど、だいたいアメリカ人の宇宙飛行士は22度ぐらいのところが良くて、それは長袖を着れば私は対処できたので、たぶん軌道上で私は長袖を着てることが多くて、アメリカ人の宇宙飛行士はたぶん半袖を着てることが多かったと思うんですけど。 樋江井:確かにそんな姿、見たことあるかもしれません。 油井:はい。そこは全員で話し合いながら、温度は決めてます。で、きぼうでいっぱい、いろんな実験してきたんですけれども、やっぱりきぼうは本当にいろんな実験ができて、私がここで紹介しきれないぐらい、私が宇宙に行ってる間、宇宙ステーションでだいたい250個ぐらいの実験があったんですよね。それ全部、当然紹介できないので、ここで簡単に紹介しますと、無重力でタンパク質の結晶を作るときれいな結晶ができるので、そうするとタンパク質を解析するのがよくできて、要は薬ですね、これをつくるのに役立つということがあるんですよ。 あとは植物を育てたりであるとか、あるいは小動物の飼育装置、こちら将来マウスを飼う予定ですので、その実験装置を組み立てたり。あるいは小型衛星と言って、先ほどきぼうは物を外に出すためのドアとロボットアームがあるって言いましたけれども、それを使って小さな衛星を船外に取り出して、アームを使用して打ち出すというような実験もやってます。 あとは将来宇宙船を造るときに、いろんな材料、今、新しい素材ができてるんですけれども、その素材がどんなものが宇宙環境に適してるかってことを調べるために、このようなものに、たくさんの材料を付けて、船外に。 樋江井:これは全て油井さんが関わった実験を。 油井:そうですね、これは私が直接関わった実験になってます。で、私のミッションのハイライトでしたけど、「こうのとり」くんって呼んでいましたけれども、こちらのこうのとりくんが種子島から打ち上げて、で、秒速8キロメートルで動いている宇宙ステーションにランデブーして、スピードを合わせて、場所を合わせて、それを私が地上と協力しながらですけれども、このロボットアームでつかんだと。で、中の物を取り出して、ごみを詰めてごみは、これが、こうのとりくんが焼却炉みたいな役割をして、全て大気圏で燃え尽きるというようなことですね。 で、こちら、実はこうのとり5号機、こちらが上がる前に、それぞれの、ロシア、あるいはアメリカの宇宙船の失敗が続いてましたので、本当に物が不足していて、私自身、体を洗うときにせっけんがなくて、水でちょっと体をこするぐらいだったんですけど、もうHTVくんが来て、こうのとりくんが来て、ようやく私にもせっけんで体が洗えるようになったと。それまでちょっと臭ったかもしれないんですけど、そういうことはなくて、これ以降は本当にきれいにできましたね。それはやはりこういう、私が軌道上で、筑波の宇宙センターの管制、そしてアメリカのNASAでは私の大先輩の若田飛行士が私との通信役をやってくださいました。 樋江井:このとき、成功させたときの気持ちって、どんなものでしたか。 油井:いや、本当に緊張して、やっぱり非常に大事な物がたくさん積んでありましたので、そして失敗をしたらISS計画全体を見直さなければいけないというような状況だったので、ですからやっぱりすごいプレッシャーもかかりましたし、ですから、本当につかんだときはほっとしましたね。 樋江井:でもつかんでる瞬間、一気にもうがんっていった気がしたんですけども。迷いがないなと。 油井:そうですね、やっぱり一生懸命訓練してましたので、あれ、90秒の制限時間、タイマー付きなんですけど、私は比較的、もう本当に1分近く余らせて、そのまますぐキャプチャーしたんだと思いますけどね。 樋江井:そこは訓練のたまもの。 油井:そうですね。あとは地上のサポートのたまものです。宇宙飛行士、宇宙に行って、だいたいくるくる回ったりして遊んでるところというか、あまり仕事、何してんのみたいな質問があるんで、ここに結構忙しいんだよということを示すために、1日を示したんですけども。睡眠は8.5時間ということで、朝起きて、6時に起きるんですけど、起きてから洗面や朝食を済ませて、すぐに仕事の準備を始めます。あ、これすいません。 で、仕事の時間っていうのは、実は合計8時間で、もう本当に数分刻みで全部スケジュールされてるんですよ。で、実はトイレに行く時間とか、ちょっとした休憩時間っていうのはここには入ってないので、実はトイレに行きたいんだったら仕事を早く済ませて、終わらせて、そこで時間を作って行くしかないですね。そうでないと仕事どんどん遅れてっちゃうんで。 あとは運動が毎日2時間必ずあります。で、夕食、自由時間などがあって、この自由時間って書いてあるところで、私はツイッターなんかを皆さんに書いて、写真を撮って書いて送って、皆さんのメッセージ、送ってくださった方いるかどうか分かんないですけど、全員分読んでましたから。そういうことはこの自由時間にやってました。 樋江井:全員分。すごい。 油井:いや、結構な時間かかりましたけれども、だいたい1時間か1時間半ぐらいかけて、毎日寝る前に、その分ちょっと睡眠時間をこの8.5から短くなりましたけども。やっぱり皆さんにいろんなことをお伝えしたいと思ったので、そのようにさせていただきました。