休業前の「山の上ホテル」で本当の「カンヅメ」!? ある文化人の1日【「新型コロナウイルス学者」の平凡な日常】
■山の上ホテル宿泊までの経緯 話は戻って、いま現在この原稿を書いている「山の上ホテル」であるが、「文豪御用達ホテル」ということを知って以来、「いつか泊まってみたい、そしてそこで、文豪たるべく執筆に専念するために、本当の『カンヅメ』をしてみたい」と夢見ていた。 タバコを止めた今、もはや喫煙可能なホテルである必要はない。小汚いビジネスホテルである必要もない。であればこそ、「山の上ホテル」のような由緒あるホテルで、文化人たるべくして「カンヅメ」をしてみたい......と、そんな矢先。2023年10月に、「山の上ホテルが2024年2月13日から全館休業」という衝撃のニュースが駆け巡る。 これは困った、である。休館(閉館)してしまったら、私の夢が叶わなくなってしまうではないか。どうしよう、最悪自腹ででも泊まるか、と思って慌ててネットの宿泊予約サイトをいくつか見てみるも、そこは絶賛話題沸騰中の、都内の人気ホテルである。どのサイトを見ても、もうすでに予約が取れなくなってしまっていた。 ワラをもつかむ気持ちで、この『週プレNEWS』の連載コラムを担当してくれている、集英社の編集者Kさんに相談してみた。するとなんと! Kさんはわざわざホテルまで直接足を運んでくれて、1室1泊の予約を取ってくれたのである! どうやら、報道直後の数日間は宿泊予約サイトも電話もパンク状態で、ホテル側が新規の予約を一時的にストップしていたらしい。 "集英社の経費で、山の上ホテルに「カンヅメ」をして、依頼されたコラムを書く東大教授"――なんとも文化人たる響きではないか。 ......しかし。 「またまた佐藤先生、何言ってるんですか。僕は『よ・や・く』しただけですよ。大御所作家でもあるまいし、経費で落ちるわけないじゃないっすかー」 ――というわけで、「ただ単に身銭を切ってホテルに泊まって、『山の上ホテルでカンヅメ!』と悦に浸りながら、ひとりこの文章を書いているだけ」、というのが事実である。
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