競技フットサルでどう“2回目”を集客するか?「Fリーグに、その魅力はある」【特別インタビュー/アビームコンサルティング株式会社 執行役員 プリンシパル・久保田圭一氏】
競技フットサル「Fリーグ」独自の魅力とは?
──すごく大きなテーマですが、Fリーグはどんなリーグを目指すべきでしょうか? 私自身、Fリーグの立場としてあまり勝手なことは言えないですけど、アビームがFリーグに参画して、私も副理事長として携わってきたなかで感じることはあります。 これは、大きな特徴と言って差し支えないと思いますが、Fリーグのファン・サポーターの振る舞いは本当に素晴らしいものだと思います。どういうことかというと、自分が応援している以外のクラブのことを“口撃”することがありません。それに、コアなファンの方は、それこそ別のクラブを推している同士が居酒屋で「Fリーグってさ」と話しています。 いわゆる、アウェイを雑に扱うような文化はなく、試合会場ではどちらのチームに対しても声援を送る姿があります。ファン・サポーターのみなさんがSNSで「#ThanksRespect」を扱ってくれたことにも象徴されますけど、日本的な感謝を表せる良さというか、他者に対して敬意を払うことができるというベースが、このスポーツにはあると思っています。 ──リスペクトを感じられるリーグですね。 ある意味では、欧米のサッカー文化とは異なりますが、そうした地域対抗、国対抗という、ともすれば過激すぎる熱狂ではなく、観客にも、選手にも、そこに感謝があふれています。 もう一つは、サッカーとフットサルの関係性をもっと強めていけると思います。 今は、松井大輔理事長がいろんなところで発信してくれていますが、サッカーのレジェンド級の選手だった方が、フットサルもプレーして、フットサルについて「自分が子どもの頃からやっておけば良かった」と話しています。松井理事長が言うことの真実味は大きいはずです。 フットサルからサッカーへ、あるいはサッカーからフットサルへという、お互いのプラスを理解しながら連携することはもっとできると信じています。Fリーグは、Jリーグや日本サッカー協会と協力しながら、彼らに対してプラスの役割を果たせるリーグだと思います。 ──SVリーグの開幕戦は金曜夜に東京体育館で開催して6500人を集めました。バレーボールも多くのファンを獲得している競技です。プロ化を目指す上で、Bリーグ(バスケ)と同じような集客力があります。シーズンの試合数も競技性もさまざまな違いがありますが、Tリーグ(卓球)やHリーグ(ハンドボール)、Fリーグは伸び悩んでいる印象です。 「競技」という点では、フットサルの認知度は高くないですよね。一方で、エンジョイで楽しむ人にとっての「フットサル」は知られていると思いますから、最高峰のリーグがあることや、競技としてガチでやっているという部分をどう知ってもらえるかだと思います。 フットサルは気軽にできるからこそ、そこに目がいきづらいと言いますか、人工芝でプレーするエンジョイ大会もありますから、そのイメージのほうが強く刷り込まれているように感じるので、「競技フットサル」は同じ土俵の話ではなさそうです。 「バスケットボール」「バレーボール」「ハンドボール」と聞いて多くの人がイメージするものは “競技”とイコールですからね。「卓球」も少し競技のイメージが遠いかもしれません。 フットサルも競技の印象とエンジョイがかなり離れているため、競技とエンジョイをどうつなぐのか、あるいはつながないのか。その辺をもっと考えないといけないですね。 ──今回の『ABeam AWARD』はクラブが主導権をもって取り組むものですが、ファン・サポーターの方ができるアクションなどもあるのではないでしょうか? そこについてはすでに多くのファン・サポーターの方がやってくれているのですが、やはり「誘ってもらう」とありがたいというのが一番です。本当にみなさん、会場に連れて来てくれていますから。 仮に、そこから先でやってもらえることとしたら、すでにつくられてはいますが、コミュニティの拡大かもしれません。最初に見に来てくださった方が、既存のファン・サポーターの方と触れ合ってもらうことも大きなメリットだと思います。先ほどお話ししたように、Fリーグには気持ちの良い応援がありますし、それを感じて新しいファンになってくれる方もたくさんいると思います。 試合後、いきなり飲みに誘うのは難しいですけど(笑)、クラブとも連携して、「うちのクラブにはこんなファン・サポーターがいますよ」とアピールしてもいいかもしれません。それに、立川アスレティックFCが試合後に会場前でビアガーデンを開催して、ファン・サポーター、そして試合後の選手が集まっている空間なども、すごく価値が高いと思います。 ──集客をテーマに、まだまだできることがありそうですね。 そう思います。チケットの仕組み一つとっても改善の余地がありますし、そこはリーグとして改善は必要と感じています。今はクラブによって購入方法がバラバラですし、集客やリピーター率、同伴率などを可視化する上でも、難しさがあります。 ホームゲームの買い方はわかるけどアウェイの買い方がわからないという人もいますから、例えばホームでアウェイのクラブのチケットが購入できたりしてもいいかもしれません。試合会場で、次のホームゲームのチケットを販売する方法なども良さそうです。 いずれにせよ、各クラブのホームにもっと足を運んでもらえるように、クラブには努力を続けてもらい、リーグはその努力をサポートする。私たちもそのサポートを続けていきます。Fリーグの競技的な魅力はもちろんのこと、アリーナに充満する気持ちの良さを多くの人に体感してもらいたいですね。