競技フットサルでどう“2回目”を集客するか?「Fリーグに、その魅力はある」【特別インタビュー/アビームコンサルティング株式会社 執行役員 プリンシパル・久保田圭一氏】
Fリーグの表彰企画『ABeam AWARD』は今シーズンで4年目を迎える。この取り組みは、Fリーグを支援する企業「ABeam Consulting」(アビームコンサルティング株式会社/以下、アビーム)が、Fリーグの発展を目的に始めた企画だ。 昨年までの3年間は、「#ThanksRespect」というキーワードを中心に、ファン・サポーターを巻き込んだ参加型企画として、各自が応援するクラブを“1位”へと押し上げるため、SNSでさまざまなアクションを起こし、大きなムーブメントを生み出してきた。 一方、4年目の今年は、「集客」をテーマにした施策に舵が切られた。 クラブごとに「観客動員目標」を定め、その数字を目安にしながら、それぞれが今シーズンの最多観客動員を目指すものだ。シンプルに、ホームゲームに一人でも多くのお客さんを集めることが狙いとなる。SNSを軸にしたファン・サポーター参加型の企画を遂行してきた過去3年間とは異なり、「集客」に特化したクラブの“地上戦”の施策を推進している。 創設から17年目を迎えるFリーグは、アリーナスポーツにおいて決して成功しているリーグとは言えない。Bリーグの興行力や集客力を横目に、Vリーグや新しく始まったSVリーグの成功事例に学びつつも、フットサルは独自の魅力を、広く届けるべきではないか──。 課題は多い一方で、ネガティブなことばかりではないはずだ。 アビームの執行役員 プリンシパルであり、一般社団法人日本フットサルトップリーグ副理事長の顔をもつ久保田圭一氏は、Fリーグの未来をどのように捉えているのか。 今シーズンのFリーグが「集客」に焦点を当てる狙いと、未来への想いに迫った。 ※取材は2024年10月17日に実施しました インタビュー・文=本田好伸 写真=伊藤千梅
どうやったら“1回目”に来てもらえるのか?
──『ABeam AWARD』は4年目を迎えました。過去3年はファン・サポーターを巻き込んだ取り組みでしたが、今回はなぜ「集客」にフォーカスした内容にしたのでしょうか? 3年前に始めた頃は「集客」というよりもまずは既存のファン・サポーターのことをもっと知らないといけないという認識がありました。「#ThanksRespect」の企画によってファン・サポーターのエンゲージメントが高まり、みなさんのことを知る機会となりました。その利点を生かしながら、この3年間は「ファン巻き込み型」の取り組みをしてきました。 しかしながら、それ自体は新規ファンを獲得できるものではありません。 昨年は、ファン・サポーターの方が新しいお客さんを連れて来やすくなるような仕掛けもしましたし、それによって一定の効果はありつつも、集客面で大きなプラスになったわけではありません。そこで、もう一度スポーツビジネスの基本に立ち返ろうと考えました。 つまり、集客が一番大事だよねという部分です。 Fリーグは現状、放映権料を高く売れるような状況ではありません。そうすると、まずはリアルの部分です。各クラブのアリーナの観客数が概ね3,000人というキャパシティは、頑張れば埋まるはずだという思いがあります。地元を回って来ていただくとか、1回目は無料招待でもいいですし、まずは来てもらわなければなにも始まりません。それと同時に、その人たちに2回目に来てもらう魅力を訴求しながらお客さんを増やしていくことがスポーツビジネスにおいて基本となる考え方です。 お客さんが増え、会場に入れない人が増えれば、現在試合を放送しているFリーグTVを観る人も増えます。放映権料の価値は観る人の数は当然重要な要素になりますし、Fリーグにおけるあらゆる価値を高めていくためにも、まずは「集客」にフォーカスすべきと考え、3年間やったことを踏まえつつ、立ち返るような施策をFリーグに提案させていただきました。 ──これまでも「頑張れば埋まるはず」「フットサルの魅力は一度見たらわかるはず」と言われ続けてきました。その点では今も、最初に来てもらうことへの課題があります。 まさに、新規のお客さんが足を運べるきっかけをつくって見に来てもらうことについては、クラブの広報の方々とも話をしています。私は2年前に、Xを通して既存のファン・サポーターの方に「なぜ1回目に見に行ったのか?」といったアンケートを取りました。そこで250人ほどの方から回答を得られたのですが、ほとんどの人が「フットサルのコーチや選手に誘ってもらった」というものでした。フットサルコートでクリニックをしている選手がきっかけとなることもすごく多かった。他にも、家族や友人から誘ってもらったケースも多いですが、いずれにせよ、スポーツは基本的に誘ってもらって初めて見る場合がほとんどのようです。 ──見たことがないスポーツであればより「誘われる」きっかけが大きいですよね。 そう思います。ですから、そういう人たちに来てもらうために、最初は無料でもいいのできっかけとなる施策を考える必要があります。と同時に、その人たちにエモーショナルなインパクトを与えることができれば、2回目が生まれます。逆に言えば、それがないと2回目はない。ですから“2回目のコンテンツ”も考えるように話しています。当然、ホームタウンに応じて観客の属性なども変わりますから、クラブごとの分析を踏まえた企画が必要ですね。 今回の『ABeam AWARD』は、そうやってクラブが率先して取り組んでもらいつつ、そのインセンティブとしてこのアワードの表彰を使ってもらえたらいいなと考えています。