ドコモの最上位クレカ「dカード PLATINUM」投入の狙い。銀行からデジタル給与まで、金融事業戦略を知る
デジタル給与払いは「NTTグループ全体で展開」
7日の決算会見ではクレジットカード以外の金融領域に関する言及が2つあった。 1つは「デジタル給与払い」への参入だ。 デジタル給与払いは、2023年4月の労働基準法施行規則改正で解禁されて以降、2024年8月にソフトバンクグループ10社がPayPayでの給与受取を開始。現時点でPayPay以外に厚生労働省から指定を受けた事業者はいない。 「PayPayさんが先行されたのは見事」と前田社長は競合を評価しつつ、「まずはNTTグループ全体での展開を考えている」と語る。 NTTドコモの強みは、NTTグループ全体で33万人超という従業員規模だ。NTTドコモは慎重に準備を進めているものの、一旦展開が始まれば、一気に国内最大級のデジタル給与プラットフォームとなる可能性を秘める。 「NTTグループの規模が大きいので、準備すべきことも多い」と前田社長は語る。労使協定の締結や従業員への説明、システム対応など、大規模組織ゆえの課題はあるものの、できるだけ早期のサービス開始を目指す構えだ。
「銀行業参入」については明言を避ける
もう1つは銀行業についてだ。 すでにマネックス証券やオリックス・クレジットを子会社化するなど着々と金融事業の強化を進めているNTTドコモだが、携帯電話大手4社の中で唯一グループ内に銀行を持っていない。 デジタル口座サービス「dスマートバンク」は2022年12月から提供しているが、同サービスは三菱UFJ銀行のBaaS(Bank as a Service)を活用しており、楽天銀行やPayPay銀行などのように自社で銀行業のラインセンスを取得しているわけではない。 一方、10月28日に一部メディアではNTTドコモの「銀行業」の買収候補として住信SBIネット銀行が挙がっていると報じられており、7日の決算会見ではその進展も注目されていた。 これに対し、前田社長は「現時点で皆さんにご報告できるレベルのものは全然ない」と述べ、「ちょっと焦っていますけど、がんばって進めていきます」と語った。
石井 徹