【大学の新設学部】2024年トレンドは「デジタル」と「グリーン」 ウェルビーイング、和食文化…
時代の変化に応じて、新しい学部を設置したり、学部編成を見直したりする大学は少なくありません。2024年度はどのような変化が見られるのでしょうか。教育ジャーナリストの小林哲夫さんが解説します。 【写真】昔のイメージとは大違い? 女子高生に人気の意外な大学
2024年に新しい学部が誕生する。いくつか紹介しよう(画像)。 いま、時代がもっとも求める人材を育成する。将来、日本を背負って立つリーダーを養成する――。多くの大学は学部をつくるにあたって、こうした高邁な理念を掲げている。 なかでも、2010年代半ばから新設学部に「情報」「データサイエンス」という情報系の名前が多く登場するようになった。まさに時代の要請である。 ビジネスを効果的に進める、生活をより便利にして日々を快適にする、健康を維持し幸福な人生を送る。そのために社会の様々な分野でAI化が進み、コンピューターのソフトを設計し使いこなせる専門家が必要となる。プログラマー、システムエンジニアといえばわかりやすい。こうした人材を育てるため、いま、大学は教育、研究分野で力を入れている真っ最中である。 23年には、情報系学部が次々と生まれた。一橋大ソーシャル・データサイエンス学部、東京都市大デザイン・データ科学部、明星大データサイエンス学環、神奈川大情報学部、名古屋市立大データサイエンス学部、京都女子大データサイエンス学部、大阪成蹊大データサイエンス学部、大和大情報学部などだ。
国は「デジタル」と「グリーン」を支援
これは、国からのバックアップがあったことが大きい。 文部科学省は特定成長分野として「デジタル」「グリーン」を牽引する人材の育成を支援するため、22年度第2次補正予算で3002億円を確保した。理、工、農学の分野またはいずれかを含む融合分野が対象となる。文科省が管轄する委員会からこんな報告書が出されている。 「例えば、データから新たな顧客ニーズを読み取って商品を開発することや、データを踏まえて効率的な資源配分や経営判断をするなど、データと現実のビジネスをつなげられる人材をマスとして育成し、社会に輩出することが、我が国の国際競争力の強化・活性化という観点からも重要」「これらの能力の活用は、AI、ロボットやセンシングなどの理工学を中心とした分野のみならず、学問領域を超えて、法律、金融・保険、健康・医療、災害対策など社会における様々な分野の発展に大きく寄与するものとして期待されている」(「大学の数理・データサイエンス教育強化方策について」数理及びデータサイエンス教育の強化に関する懇談会、2016 年12 月) なるほど、データサイエンス学部、情報学部などの情報系学部設置は、国策といっていい。国からお金が出る。大学が飛びつかないわけがない。 国がもう一つ力を入れるテーマに「グリーン」がある。これは農学、環境学を指している。24年新設の食健康科学部、食環境学部、農学食科学部は、農学部の食分野を進化させた形であり、SDGs(貧困をなくす、環境破壊を防ぐなど、持続可能な世界を築くための開発目標)を意識している。 このなかで地元の強みを生かそうとしているのが、京都府立大農学食科学部和食文化学科だ。「日本における和食文化を継承・発展させ、和食が持つ魅力とその神髄を世界に向かって発信できる人材を養成」と掲げており、教育内容をこう紹介する。「和食文化の重要な食材『京野菜』についての記述を文献資料の中から探り出し、昔の姿を学ぶとともに、生産農家や料理人を訪ねて、おいしさを追求する現在の品種、生産方法や改善を続ける料理方法など、現在の『京野菜』を学びます」(大学ウェブサイト)。大学で京野菜を学ぶ。これだけでも惹かれてしまう。 新設学部には「ご祝儀的」に受験生が多く集まった時代があった。いまは少子化が進んでいることもあって、新設といえども受験生から選ばれず、初っぱなから定員割れを起こしている大学がある。