F1角田裕毅、2024年の明確な進化 フル参戦4年目、結果と速さを追求
角田裕毅の2024年は十分満足のいく成果があった。自動車F1シリーズへのフル参戦4年目。12月8日決勝の最終第24戦、アブダビ・グランプリ(GP)で幕を閉じた戦いは、ドライバーズランキング12位という自己最高成績として結実した。通常レースの入賞は3度の7位を最高に9度。マイアミ・グランプリ(GP)のスプリント8位(1ポイント)を含め、合計30ポイントを積み上げた。(時事通信運動部 佐々木和則) 【写真】日本GPフリー走行、桜咲くコースでマシンをドライブするRBの角田裕毅=4月 ◆最終戦は12位 シーズン終盤はRBの親チーム、レッドブルへの昇格も取りざたされ、大きな注目を集めた。レッドブルはクリスマス前、中盤戦以降不振だったセルヒオ・ペレス(メキシコ)の離脱を決め、その後釜には今季途中から角田のチームメートだったリアム・ローソン(ニュージーランド)を据えた。角田のトップチーム入りはなくなったが、今季の走りも結果も誇れる内容だった。 11番グリッドから入賞を狙ったアブダビGPではスタートで大きく出遅れた。「クラッチをつないだ時にくっついた感じになって、ストールしかけて、アンチストール(モード)に自動的に入って失速した。アンチストールは僕のF1キャリアの中で一度も経験したことがなくて、特にスタートのプロシージャー(手順)をミスした訳でもなく、とにかく残念だった」。12位でゴールした後、無念の表情で振り返ったが、24年の戦い自体は納得できるだろう。 ◆成長は「全て」 この1年間の成長を問われると、「全て。ドライビング中のアプローチや姿勢、チームとの取り組み方が昨年より良くなった。また、プレッシャーに対しても強くなり、どのような状況でも落ち着いて走ることができていたと思う」。よどみなく自己評価を口にした。 「やっぱり鈴鹿。母国で初ポイントだったし」。自身が選ぶ今季のベストレースには、初めて4月の春開催として鈴鹿サーキット(三重)で行われた日本GPを挙げた。予選で10番グリッドを獲得し、レースでも粘って10位に入賞して1ポイントを獲得。22年の13位、昨年の12位から順位を上げ、日本のファンの喝采を浴びた。 シーズン終了後、東京都内でメディア対応した角田は「そこ(日本GP)がやっぱりハイライトだった」と改めて振り返り、言葉を続けた。「今年の、特にたまたま桜(の開花)が少し遅れて、満開の時にレースができたんで、しかもその中でポイントを取れたってのは本当によかった。気持ちよかった」 ◆目を見張る快進撃 序盤戦から前半戦、角田の快進撃は素晴らしかった。昨季までのアルファタウリからチーム名はRBに改称された。正式名称は「Visa Cash App RB(ビザ・キャッシュアップ RB)」。クレジットカード大手の「Visa」がタイトルスポンサーになり、マシンのカラーリングもがらりと変わった。角田の同僚は、F1通算8勝を誇るベテランのダニエル・リカルド(オーストラリア)。親チームの強豪、レッドブルに復帰することをもくろむリカルド相手に角田は一歩も引かず、予選、決勝とも「チーム内バトル」で圧倒するたくましさを見せた。 今季は途中からローソンがリカルドに代わって加入。角田は2人のチームメートとも戦った。「去年と比べて、成績上でステップアップできたこと、コンスタントにチームメートに勝つことができたのはまず良かったなと思う。そこが特にターゲットだったし、やっぱり一番見られるところなので、そこを第一に考えて2人のチームメートを成績部分で明らかにできたのは良かった。あとは自分的に一つ一つ足りない部分がすごく明らかになったし、リカルド選手から学ぶことが多かったので、もちろん勝ちつつ、彼らのいいところを吸収できた部分も良かったなと思う」 ◆「すごいペース、すごい週末」 第3戦オーストラリアGPで予選8位、決勝7位で流れをつかむと、次の日本GPでも入賞。第6戦マイアミGPではスプリントで8位、レースでも終始、入賞圏内を走って7位に入り、計7ポイントをチームにもたらし、リタイアに終わった前戦中国GPから挽回した。 マイアミGPのレース中盤、タイヤ交換を遅らせて7番手に浮上すると、直後にセーフティーカーが導入された間にピットイン。そのままミスのない走りで、一時8番手に後退も7位でフィニッシュ。「すごいペースだった。すごい週末だった」と英語でまくし立てた。マイアミでのマシンの戦闘力は強豪メルセデスに匹敵するタイム。ドライバーズ部門で10位に浮上し、「最大限にチャンスを生かせてよかった」と喜んだ。 その後も第7戦エミリア・ロマーニャGPで10位、伝統レースの第8戦モナコGPでは8位。入賞争いの常連になっていった。一方のリカルドは、マイアミGPのスプリントで4位はあったものの、今季初入賞は第9戦カナダGP。角田がチームのエースであることは、誰の目にも明らかだった。