園児・支援学校生も「応援団」 三島南・八戸西 選抜高校野球
第93回選抜高校野球大会(毎日新聞社など主催)は19日、兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で開幕する。今大会は2020年秋の明治神宮大会が新型コロナウイルスの影響で中止となったため、明治神宮枠の分が追加され、21世紀枠は例年より1校多い4校が選出された。地域との交流を深めてきた点が高く評価された学校には、特別な「応援団」が選手たちにエールを送る。 【写真】応援ポスターに小泉のんさん ◇子どもたちに野球体験会 「これがバットと言います」「頭にボールを『ポンポン』としてから投げてごらん」。20年11月、三島南(静岡)のグラウンドで、静岡県三島市立大場幼稚園の年中と年長の園児ら32人を対象にした野球体験会が開かれた。園児らは園まで迎えに来た選手たちと手をつなぎ、グラウンドまで歩いて行く。皆で鬼ごっこをして体を温めてから、アニメのキャラクターが描かれた的に向かってボールを投げたり、投げられたボールを打つことに挑戦したりした。 「野球を知らない子どもたちも、どんどん夢中になっていく。うまくできると『楽しい』『もっとやりたい』とのめり込んでいきます」と園の久原詩子教諭(36)は目を細める。体験会後に園児たちが「三島南で野球をしたい」と口にすることもあるという。 三島南による野球体験会や教室は14年12月から始まった。稲木恵介監督(41)は13年の赴任時、市内の野球人口の減少に直面。「子どもたちに野球の楽しさを伝えたい」との思いから、高校の代休日を返上し、保育園や幼稚園と交流するようになった。これまでに開催は32回を数え、参加した子どもたちは1100人を超える。 ◇幼稚園の運動会もお手伝い 交流は野球にとどまらない。19年10月、大場幼稚園は運動会の開催当日だったが前日までの雨のため早朝に園庭を整備する必要に迫られた。すると、同じ日に学校で練習試合を控えていた選手たちがスコップやスポンジを抱えてやってきてお手伝い。ほかにも「体験会のついでに……」とひまわりを植える花壇を作ってくれたり、掃除を手伝ってくれたりしたこともあった。 園児たちにとってナインは「甲子園球児」という遠い存在ではなく、身近な「お兄ちゃん」だ。まだ野球や甲子園のことはよく分からないがテレビに映るお兄ちゃんたちを見ようとわくわくしている。福尾美幸園長(64)は選手たちの活動に感謝しつつ、「『甲子園はすごい舞台』と子どもたちが実感し出すと、それが憧れや夢につながっていくはずです」と選手たちの活躍を期待する。 ◇支援学校生がボール補修 八戸西(青森)と青森県立八戸高等支援学校は2年前から交流を続ける。支援学校の生徒らが八戸西野球部のボールを補修しナインを支える一方、定期的に選手らから筋力トレーニングのアドバイスを受けたり、一緒にパラスポーツの競技を楽しんだりしてきた。 20年12月には支援学校でスポーツ交流会も実施。八戸西の宮崎一綺(かつき)主将(2年)とペアになってストレッチなどに取り組んだ支援学校の野坂太陽さん(同)は、同じ学年ながら、何事も真剣にやろうとする宮崎主将の姿勢に感心させられたという。八戸西の出場が決まった時は自分のことのようにうれしかったといい、「優勝目指して頑張ってほしい」とエールを送る。 支援学校の渡辺匠哉教諭(30)は「生徒たちもみんな応援している。試合の日は学校をあげて応援したい」と話す。大会第3日(21日)の初戦は、体育館に集合してスクリーンで観戦し、選手らの活躍を見守る予定だ。【深野麟之介、南迫弘理】