レゴラスの弓が刺さる感覚も味わえる!?超長尺アトラクションな『ロード・オブ・ザ・リング』SEE版4DXを体験してきた
J.R.R.トールキンの原作を基に、ピーター・ジャクソンが監督と共同脚本を務めたファンタジー超大作「ロード・オブ・ザ・リング」3部作。その知られざる200年前の伝説の戦いを映画化した長編アニメーション『ロード・オブ・ザ・リング/ローハンの戦い』が12月27日(金)より公開となる。これを記念し、3作それぞれの劇場公開版に30~50分ほどの未公開シーンを追加した「ロード・オブ・ザ・リング」スペシャル・エクステンデッド・エディションが日本初となる4DXで現在上映中だ。早速、第1作を体験してきたので、劇場で得られた新たな感動と興奮を紹介したい。 ※本記事は、ネタバレ(ストーリーの核心に触れる記述)を含みます。未見の方はご注意ください。 【写真を見る】激流の水しぶきも、アクションシーンの衝撃も体感できる!没入感がものすごい「ロード・オブ・ザ・リング」4DX上映 ■映画史に輝くファンタジー超大作「ロード・オブ・ザ・リング」 『ロード・オブ・ザ・リング』(01)、『ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔』(02)、『ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還』(03)からなる「ロード・オブ・ザ・リング」3部作(以下、「LOTR」)。冒険の始まりを描いた1作目は第74回アカデミー賞で作品賞を含む合計13部門にノミネートされ、最多4部門を受賞すると、完結編となる『王の帰還』では第76回アカデミー賞において作品賞、監督賞をはじめ11部門に輝き、世界的大ヒットシリーズとなった。 舞台となるのは“中つ国(ミドルアース)”と呼ばれる世界で、人間のほかに、エルフやドワーフ、さらにオーク、トロルといった邪悪な生物までもが息づいている。中つ国にはかつて、恐ろしい力を持つ“一つの指輪”を創りだし、世界を支配しようと目論んだ冥王サウロンが存在していたが、エルフと人間の連合軍によって打ち倒された。年月が流れ、平和に暮らしていたホビット族の青年、フロド・バギンズ(イライジャ・ウッド)が、かの指輪を手にするところから物語は始まる。灰色の魔法使い、ガンダルフ(イアン・マッケラン)により、サウロンはいまだ滅んではおらず、復活のため指輪を求めていると聞かされたフロドは、指輪を安全な場所に届けるため、サム(ショーン・アスティン)、メリー(ドミニク・モナハン)、ピピン(ビリー・ボイド)ら幼なじみと共にホビット庄を旅立つ。 道中で人間の王族の末柄であるアラゴルン(ヴィゴ・モーテンセン)の助けも得ながら、エルフの国、裂け谷にたどり着いた一行。安堵したのもつかの間、中つ国の平和を取り戻すためには、指輪をモルドールにある滅びの山の溶岩に投げ込む以外にないことが明らかになる。かくして、その重荷を背負うことを決意したフロド、ガンダルフとアラゴルン、サム、メリー、ピピンに、エルフのレゴラス(オーランド・ブルーム)、ドワーフのギムリ(ジョン・ライス=デイヴィス)、人間の国ゴンドールから来たボロミア(ショーン・ビーン)も加わった9人の“旅の仲間”が結成され、モルドールへと赴くことに。しかしそれは、数多の危険と困難に満ちた旅の始まりだった。 ■「ロード・オブ・ザ・リング」とアトラクション効果満載の4DXとの相性は? 今回鑑賞した劇場は東京のグランドシネマサンシャイン 池袋。記念すべき4DX上映の第1回目にあたる回だったとはいえ、平日金曜のお昼過ぎという時間帯ながら客席のほとんどが埋まっていたことに、シリーズの根強い人気、ファンの熱量の高さを改めて実感させられた。世代も幅広く、中には初めてシリーズを劇場で鑑賞したという人もいたのかもしれない。おそらくそれは、一生ものの映画体験になるはずで、羨ましい気持ちにもなった。 本編前の新作紹介では『ロード・オブ・ザ・リング/ローハンの戦い』を手掛けた神山健治監督からのコメント付き予告も映しだされ、ホビット庄の袋小路屋敷のセット内で腰をかけ、シリーズへの想いや4DX上映への期待を語る姿にだんだんとこちらのワクワク感も高まって来る。いっぽうで、「LOTR」は20年も前の作品であり、物語や映像がすばらしいことはわかっていても、前後上下左右に稼働する座席シートや、匂い、風、水しぶきなど様々なギミックが施されたアトラクション効果満載の4DXとの相性はどうなんだろう?という疑問があったのも確か。しかし、そんな懸念は「The Lord of the Rings」のタイトル登場と共に払拭されてしまった。 ■プロローグから一気に「ロード・オブ・ザ・リング」の世界へ! プロローグではサウロンの興りと敗北、指輪の持ち主たちがたどって来た歴史が説明される。そして、人間とエルフの連合軍がサウロン陣営に立ち向かった“最後の同盟の戦い”のシーンからいきなり圧倒されてしまった。エルフの兵隊が弓矢を放つ度に首のあたりにヒュッ、ヒュッと風が吹き付けられ、両陣営の剣や槍が互いを打ち合えばその斬撃がシートの振動という形で再現されていく。そこにサウロンが現れ、手にしたメイスで次々と人間とエルフを薙ぎ払うのに合わせて、ドーン、ドーンと衝撃が体に伝わって来るので、その力の強大さを実際に体感しているような迫力があった。 その後も、指輪を奪われたサウロンが爆散して消滅するシーン、指輪を手にした人間の王子イシルドゥアがあやめ野でオークに襲撃され命を落とすシーンなどが続き、4DXとの相乗効果で臨場感がより増した「LOTR」の世界に瞬く間に入り込んでいくことができた。 ■中つ国の一部になったような没入感 第1部は観客を「LOTR」の世界へ引き込む導入的作品でもあり、そういう意味でも劇中には村や町、城塞都市、廃墟に雪山、大河などが次々と登場し、中つ国の壮大さ、紡がれてきたであろう歴史の深さを感じ取ることができる。今回の4DXを体験しながらまず実感したのは、こうした中つ国の世界の一部になれたような没入感だった。 争いとは無縁な田園風景が広がるホビット庄に、エルフたちが住む裂け谷やロスローリエンの美しさ。ドワーフが築いた地下宮殿カザド=ドゥム、大河アンドゥインを挟んでそびえ立つアルゴナスの巨大な石像からは、かつて存在した文明の栄枯盛衰が示唆され、モルドールにて再建されているサウロンの居城、バラド=ドゥーアには支配欲と禍々しさが渦巻いている。 ジャクソン監督の故郷ニュージーランドで撮影された自然豊かな風景、セットやミニチュア、3DCGを駆使して造られた建造物をじっくり端から端まで追ってみたり、ゆっくりカメラを引きながら遠景でも見せてくれたり。その動きに合わせてシートも上下左右に動くので、まるで観客自身がドローンカメラになっていままさに撮影をしているような感覚にさせられる。例えば、サウロン陣営に寝返った白の魔法使い、サルマン(クリストファー・リー)が放った黒い鳥クレバインの群れが旅の仲間の動向を偵察し、アイゼンガルドに舞い戻って来る一連のシーンでも、オークと人間を掛け合わせたウルク=ハイやその武具を製造する地下工場に実際にもぐり込んだような臨場感があったので、縦横無尽に動くシートの機能がうまく作用していたように感じられた。 ■数々のアクションシーンがより迫力あるものとしてバージョンアップ! バラエティに富んだアクションシーンも「LOTR」の魅力の一つ。アモンスールの見張り台におけるアラゴルンと“指輪の幽鬼”ナズグルの戦い、モリアの坑道でのオークの群れ&トロルとの激闘、アモン・ヘンでのウルク=ハイの一団との対峙といった戦闘シーン、瀕死状態のフロドを馬に乗せて逃げるエルロンドの娘アルウェン(リヴ・タイラー)を追って来たナズグルが激流に押し流されるシーンなどが、バックシートからのアタック、水しぶきなど様々なギミックを合わせてより迫力ある場面に昇華されている。弓の名手であるレゴラスが矢を連射するアクションに対し、その一本一本が敵に刺さる感覚が風や振動で丁寧に再現されていることからも強いこだわりが感じられた。 特に印象的だったのが、アイゼンガルドのオルサンクの塔内で繰り広げられたガンダルフとサルマンのバトルで、互いの魔法で相手を吹き飛ばす度にその衝撃に呼応してシートが振動。ガンダルフを追い詰めたサルマンが、彼を宙に浮かせて塔の屋上に幽閉する場面では、ぐるぐる回転するガンダルフと共にシートも動くので、シリアスなシーンながらアトラクション的な楽しさも感じることができた。 ガンダルフつながりでは、モリアの坑道の終盤、カザド=ドゥムの橋における古代の悪鬼バルログとの対決シーンも壮絶。全身に炎を纏った圧倒的威圧感を目の前に一歩も引くことなく、「この先は通さん!」と橋の中央に立ちはだかるガンダルフ。その気迫も真に迫ってくるようで、この戦いの先に訪れる悲劇も含めて、シリーズ屈指の名シーンに磨きがかかっていた。 ■指輪とサウロンによる重圧がより強烈に… あえて動きのないシーンにも注目したい。それはホビット庄を出たばかりのフロドたちが、ナズグルの存在に気付いて木の根の窪みに隠れるシーン。ナズグルが乗る馬の足音に合わせて振動はするものの、全体的にギミックは静かになってしまうので、息をひそめるフロドたちの緊張感が手に取るように伝わってきた。 登場人物の心情とのリンクという点では、特に指輪の持ち主であるフロドの苦悩、葛藤が強く表現されていたと思う。指輪をはめることで周囲から姿を見えなくすることができるのだが、持ち主はすべてが歪んだ影の世界へと入り込みサウロンともつながってしまう。その際の全身にかかる重圧が後ろに倒れて振動するシート、瞼の無い火で縁取られたサウロンの巨大な目から放たれる業火も首筋にかかる熱風で再現されており、フロドがどれだけの重荷を背負っているかが改めて認識させられる。 ■トロルの唾にウルク=ハイの血しぶき、モリアの異臭までもが再現!? ここでこんなギミックが!と思わず笑ってしまいそうな演出もあったので紹介しておきたい。フロドの前の指輪の持ち主で彼の養父にあたるビルボ・バギンズ(イアン・ホルム)を訪ねて袋小路屋敷にやって来たガンダルフ。ホビットサイズのこの家は彼にとっては少々窮屈で、ビルボに呼ばれて振り向いた瞬間に天井の梁に頭をぶつけるシーンでも、しっかりとバックシートから小突かれた。 モリアでの戦闘ではフロドの目の前に現れたトロルが吠えるシーンがあったが、ここではスクリーンいっぱいに降りかかるトロルの唾を水しぶきとして再現。アモン=ヘンでウルク=ハイの隊長ラーツの頸をアラゴルンが刎ねた際にも、飛び散る血に合わせてやはり水しぶきが顔にかかってきた。 このほか、様々な香りがしてくるというギミックもあり、モリアでドワーフたちの死体が散乱しているのを発見したシーンでは、不快というわけではないのだが、何とも言えない臭いが鼻をついてきた。美しい森林に隠されたロスローリエンではどこかかぐわしい香りが、裂け谷でアラゴルンとアルウェンが互いの想いを確かめ合うシーンではなんだか甘い香りが漂っていた。また、劇場にはスモークを放つ装置も備わっており、カラズラスの雪山で一行が雪崩に巻き込まれた場面ではモクモクと白い煙がかすかにスクリーンを覆うという演出も。 ■高まる『二つの塔』&『王の帰還』への期待 『旅の仲間』では、ガンダルフが闇に堕ち、ボロミアも敵の矢に討たれるなど、旅の仲間が改めて任務の厳しさ、重圧を思い知らされ、打ちのめされることになる。しかし、それでもフロドはサムを連れてモルドールへ向かう決意をし、アラゴルンとレゴラス、ギムリはウルク=ハイにさらわれたメリーとピピンを救出する選択をする。ガンダルフが放った言葉の通り、それぞれが与えられた役割を懸命に果たそうとするなかで、第1部の幕は閉じられる。バッドエンド的な幕引きながらそれでも希望を感じられるのは、前へと進み続ける登場人物のこうした姿が観客の心を激しく揺さぶるからに違いない。 壮大な物語は第2部『二つの塔』、第3部『王の帰還』へと続き、騎士の国ローハン、ゴンドールの王都ミナス=ティリス、モルドールの黒門、滅びの山へと世界もどんどん広がっていく。ローハンとサルマン陣営がぶつかる角笛城の合戦、木の髭らエントの大行進、巨大なオリファントがペレンノール野を蹂躙するシーンに、4DXがどのような演出を加えるのかと期待と楽しみが次から次へと湧き上がってくる。 ■最新作『ロード・オブ・ザ・リング/ローハンの戦い』につながるポイントも! そして、12月末にはいよいよシリーズ最新作『ロード・オブ・ザ・リング/ローハンの戦い』が公開に。原作小説「指輪物語7 追補編」に記され、大勢の敵を素手で屠ったという“槌手王(ついしゅおう)”ヘルムの伝説に着想を得た物語が描かれ、製作総指揮でピーター・ジャクソン、プロデューサーとして「LOTR」の脚本を担当したフィリッパ・ボウエンも参加している。 主人公はローハンの若き王女ヘラ(声:小芝風花)。ヘルム王(声:市村正親)に護られながら平穏な日々を送っていたローハンだったが、突然の敵襲を受け、王国は滅亡の危機に陥ってしまう。平和が壊されていくなか、運命はヘラに託された。しかし、そんな彼女の前に、かつて共に育った幼なじみのウルフ(声:津田健次郎)が最大の敵として立ちはだかる。 ローハンが舞台ということで、実写3部作においてセオデン王(バーナード・ヒル)やエオウィン(ミランダ・オットー)、エオメル(カール・アーバン)らが本格的に活躍する『二つの塔』、『王の帰還』とのつながりは強い。特に『二つの塔』のクライマックスとなる角笛城があるヘルム峡谷は、『ローハンの戦い』でメインキャラクターとなるヘルム王に由来し、彼が角笛を吹き鳴らしただけで大勢の敵兵を恐怖させたという伝説を想起させる巨大な角笛も城内に設置されている。角笛城がローハンにとって重要な場所である理由が最新作で明かされるはずだ。 『旅の仲間』にもまた、『ローハンの戦い』とのつながりを感じさせるポイントが。ゴンドールの執政官の長子であるボロミアは同盟国であるローハンの街道を通ってミナス・ティリスに入り、装備を整えたうえでモルドールへと向かうべきだと考えており、そのことをしきりに提言しては、ガンダルフを失い旅のリーダーとなったアラゴルンとも衝突していた。追加された未公開シーンには思い詰めるボロミアの姿も確認でき、彼が次第に指輪の魔力に取り憑かれていく様がより深く描かれている。また、大河をボートに乗って進む一行の前にアルゴナスの巨大な石像が姿を現すが、2体のうち右側に立っているものはヘルム王だとも言われている。 ■いざ!“中つ国ライド”へ スペシャル・エクステンデッド・エディションの劇場上映というだけでも貴重な機会なのだが、『旅の仲間』は208分、『二つの塔』は224分、そして『王の帰還』はなんと253分(実に4時間13分)!このような超長尺映画を4DXで体験するというのはそうそう巡り会えるものではないだろう。ニュースが発表された際には、ファンからの「長時間に耐えられるか!」や「トイレどうしよう!」といった嬉しさから来る悲鳴も聞こえてきた。『ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔』は11月29日(金)~12月5日(木)、『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』は12月6日(金)~12月12日(木)での上映を予定。おそらく“史上最長”となるアトラクション、“中つ国ライド”にぜひ参加してみてほしい! 取材・文/平尾嘉浩
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