崩れた信頼の再構築...イスラエル軍が挑むガザ戦争の「真の意味」
20代が10代を指揮
36万人の予備兵を直ちに招集 これは伝統的なイスラエル軍の傾向を考えると、異例のことだ。 確かにイスラエルは、近隣地域でなんらかの問題が起こると、軍事的な対応をしたがる傾向がある。それでも長期的な軍事行動よりも、空爆などの短期的で限定的な戦術が好まれてきた。ガザ奪還の必要性など考えたこともなかったと、現役および退役軍人の多くは声をそろえる。当然、そんな不測の事態に備えた作戦は十分練られてこなかった。 それでも、軍事的な対応を好む傾向ゆえに、ハマスの奇襲後、直ちに約36万人の予備兵に招集がかかった。イスラエルの人口の約4%に当たる規模だ。彼らは数日後には前線に送り込まれ、数週間後には一部がガザでの戦闘を担っていた。 予備役部隊は、今回の戦争が始まる前から、組織的な投資不足と即応性の課題に苦しんでいた。23年1月のイスラエル国家安全保障研究所の報告書によると、兵役の義務を果たした後、3年間に少なくとも20日間従軍するという予備役の要件を満たしている人は約6%にすぎない。 軍の構成が予備役に依存していることは、軍事行動に前のめりな傾向をさらに強める。予備役が多いため民間部門の労働力に占める割合も高く(技術部門は労働者の推定10~15%が招集されている)、経済の大きな混乱を避けるためにも、迅速な勝利を求める強い動機付けになる。 20代の士官が10代を指揮する 1年前にイスラエル軍は組織として失態をさらしたが、一方で勇敢な個人のエピソードが数多く生まれた。 襲撃の知らせを聞いたある退役少将は拳銃を手に、息子家族が暮らす南部キブツ(農業共同体)に急ぐ道中で他のイスラエル人を助けながら、10時間後に家族を救出した。女性だけの戦車部隊は詳細な命令を待たずに出動し、数十人規模の武装勢力と交戦してキブツを救った。ほかにも数え切れない英雄たちの活躍は、イスラエル軍の文化の最も称賛すべき側面でもある。 イスラエル軍には、西側諸国の軍隊のような構造上の制約が少ない。軍曹の階級はあるが、主に士官が指揮を執る。徴兵制のため米軍より若い士官が多く、20代の士官が10代後半の徴集兵を指揮することも珍しくない。部隊を視察したアメリカの軍事監視員が、くだけた雰囲気や、基本的な軍事プロトコルを軽視していることに驚くのも無理はないだろう。