表彰式で肩を組む潘展楽（中央）とチャルマーズ（左）。わだかまりなどないように見えるが…。(C)Getty Images

　公の場で“完全無視”を訴えられたアスリートが困惑気味に反論した。 　事の発端は現地７月31日、パリ五輪・男子競泳100メートル自由形での優勝インタビューだった。中国の若きエースである潘展楽が世界新記録となる46秒40で見事に金メダルを奪取。自身の記録を0秒40も更新する圧巻のパフォーマンスだったが、19歳の俊英は中国テレビ局のマイクに向かって知られざる事実を明かしたのだ。 【画像】シュミット、ビロディド、ギュネシュ、古賀紗理那…パリ五輪に華を添える美女アスリートを一挙紹介！ 　潘展楽は大会中に他国選手から嫌がらせを受けていたと告白。「大会初日から酷いものだったよ。（４×）100m自由形リレーの時にカイル・チャルマーズ（オーストラリア）のところに挨拶に行ったんだけど、彼は僕らを完全に無視したんだ」と暴露すると、さらに「ジャック・アレクシー（アメリカ）なんて、練習でフリップターンしながらプールサイドにいた（中国の）コーチに水をかけてきた」と付け加えた。 　そして潘展楽は「きっと彼らは僕らを見下しているんだと思う」と私見を述べ、「ただひとつ言っていい？　そんな彼らを僕は今日打ち負かしたんだ」と誇らしげに胸を張った。チャルマーズは潘展楽より１秒遅れの２位で銀メダル。アレクシーは７位に終わった。 　周囲が中国競泳チームに懐疑的な目を向けてきたのは確かだ。今年４月、2021年の東京オリンピックの７か月前に禁止薬物の陽性反応が出たにもかかわらず、23人の中国人スイマーが罰せられていなかったことが発覚。大きな騒動に発展し、世界アンチドーピング機構（WADA）はドーピング検査の強化を決断する。中国競泳代表の選手たちはパリ入りしてからの最初の10日間だけで、200回近い検査を受けたという。 　 　潘展楽のなかに、どこかで被害者意識がなかったか。名指しで告発されたチャルマーズの言葉を母国メディアの『The Roar』が伝えている。 　26歳の東京五輪銀メダリストは「それはちょっと奇妙だよね」と切り出し、「だってその大会初日のリレーの時に僕らはフィストバンプ（グータッチ）をしたんだよ。僕はすぐに仲間とのレースに向けて集中力を高めたけど...。（100メートル自由形決勝の）前の日もウォームダウンの時に談笑した。僕としてはなにも問題はなかったんだけどなぁ」と首を傾げた。 　2023年の世界選手権では潘展楽が近づいてきて、「あなたは僕のアイドルです。ずっと尊敬しています」と興奮気味に話しかけてきたという。チャルマーズは「ちゃんと英語を使ってくれて、すごく嬉しかったのを覚えているよ。決勝後にも彼におめでとうと言ったら、また『おー、あなたは僕のアイドルです』と言ってくれたんだよ」と振り返り、「パン（潘展楽）は金メダルに値する素晴らしい泳ぎをしたと思う」と称えた。 　両者の意見にはどうにも食い違いがあるが...。もはや真相は彼らにしか分からない。 構成●THE DIGEST編集部