西アフリカで流行続くエボラ出血熱 海を越えて日本上陸はあるのか
今年に入って西アフリカでのエボラ出血熱の流行が続き、現地での感染拡大の懸念はいまだに払拭できていません。世界保健機関(WHO)の統計によると、今年2月以降に1000人以上が感染、うち660人が死亡(7月20日現在)したとみられます。エボラ出血熱は過去何回か流行していますが、今回の西アフリカ3か国(ギニア、リベリア、シエラレオネ)のケースは感染者、死者ともに過去最大級。外務省医務官の経験のある関西福祉大学の勝田吉彰教授は「これまでの発生は山奥だったが、今回は首都という人口密集地も含むエリアで流行したことが大きな違い。人の動きが多く、感染拡大を防ぐ囲い込みが難しい」と話しています。 ただしエボラ出血熱はほかの人に感染する前に死に至るケースが多く、的確に隔離されれば拡大しにくいともいわれ、海を越えて日本にまで来る可能性は低いとみられます。
空気感染はしない
エボラのウイルスが発見されたのは1976年のスーダン。その後、突発的に10回ほど流行し、感染したときの致死率は50~90%と非常に高いものになっています。治療法も確立されていません。 一方で今回の西アフリカの流行が起きるまでの死者数は1500人強で、マラリアなどの感染症と比べ少ないとの指摘もあります。空気感染などはせず、感染した人の血液や臓器、排泄物に接触しなければうつりません。このためこれまでは感染者の隔離によって拡大を防ぎ、短期間で消滅させることができていました。しかし、今回は都市部での発生で、すべての患者を特定できていないと見られています。
西アフリカで拡大した背景
さらに文化的な違いも感染拡大を止められない背景になっているようです。勝田教授は「エボラに限らず、病気は神の呪いという考えはまだ根強く、現地の人々が祈とうや薬草という伝統的な治療に頼り、近代医療体制が信用を得られていない面もある」と指摘。「隔離するべき患者を、現地の人たちや教会関係者などが別にかくまってしまうというケースもある」といいます。 また西アフリカは埋葬の際、遺体にふれて哀悼するという習慣が残っており、これも感染拡大につながるともいわれます。さらにエボラ出血熱はコウモリやチンパンジーなどの野生動物の肉を食べる習慣が原因になっているとの見方がありますが、「コウモリを食べないようおふれは出したようだが、強制的な命令にはなっていないのでは」(勝田教授)といいます。こうした文化的な違いとわからない病気という恐怖心から混乱が広がり、国境なき医師団の「制御できない状況」という声明につながったとみられます。