「このすば」作者の暁なつめさんは地元愛が強い?「カニを出さないのはいけないでしょ」 福井県出身のライトノベル作家
福井県越前市出身の作家、暁なつめさんの代表作で、シリーズ累計1千万部超の異世界転生コメディーライトノベル「この素晴らしい世界に祝福を!」(角川スニーカー文庫、略称このすば)。本編は2020年に完結したが、今年春にテレビアニメ第3期が放送されるなど人気は衰えない。このすばでプロ作家デビューしてから昨年10周年を迎えた暁さんに、作品に込めた思いやこれからの抱負を聞いた。 ―昨年プロ作家デビュー10年を迎えた。 「本当に長く続いたなって。(デビュー当時は)ライトノベル業界は結構ポッと出て、すぐ消えていくのが当たり前みたいに思われていたので、売れればいいなと思いながら書いていた」 「初期の作品、このすば1巻とかを読むと、全体的に荒いなとか雑やなとか、この辺直したいなとか、もう少しひねりたかったとか反省点はいくつもある。いまだに読んだら恥ずかしくてもだえたりします。でもこれはこれで味があっていいかな」 ―このすばはどのようにして生まれたのか。 「当時から異世界転生ものは結構あったが、テンプレートの作品が山ほどあって、もう飽きたっていう声がいっぱいあった。なので、あえてテンプレをちょっとだけ外した。ちょっとだけひねくれた感じで、でも王道は外し過ぎないようにした」 ―主人公はステータスはすごく低いけど、いろいろなスキルが使えるようになるキャラ。 「主人公は完璧超人で弱点がないみたいな作品が主流だったので、テンプレにはしたくなかった。制限があった方がおもしろいかなと考えた」 ―2016年にこのすばがテレビアニメ化された。 「とんとん拍子で漫画化、アニメ化が決まった。アニメ放送前は、編集者と何巻ぐらいで終えましょうかみたいな話をしていた。アニメがすごくヒットして第2期放送もすぐに決まると、巻数を増やしましょうかとなり、第2期もヒットしたらずっと書いちゃってくださいってなった」 「アニメのヒットは大きかった。毎月、編集者の方から重版が決まったという話をされていました。アニメから入って原作を読む人が一番多いので」 ―このすばは世界中で愛されている。このすばはどんな作品か。 「代表作で一番大事な作品。思い入れが一番強いかな。ファンレターの数もこのすばは桁違い。海外からも届いて、一度米国の刑務所の受刑者からも来た。あれにはびっくりした。今も大事に保管しています。ファンレターはすべて金庫に入れています」 「今でも海外のイベントからお誘いがよくきます。ただ全部断ってます、飛行機が怖いので。生まれてから一回も飛行機に乗ったことがない人間です」 ―地元愛が強い。 「作中でも高級カニが登場する。高級カニといえば越前がに。カニを出さないのはいけないでしょ」 「毎巻、作者プロフィルには越前市出身と書いている。勝手に越前市をPRしています。たけふ菊人形でこのすばやってほしいな」 ―今後の抱負は。 「学園ものやミステリー系とか、いろいろなジャンルに挑戦していきたい。それでもやっぱりコメディー要素は忘れずに。自分の強みなので。ホラーは書いてるうちに自分が怖くなるので避けようかな」 ―このすばを超える作品は誕生しそうか。 「このすばを超える作品を作りたいです。でも超えたくない思いもある。思い入れが強いので」 ―福井のファンへメッセージを。 「福井県の皆さん、特に越前市の皆さん、これからも変わらず応援してほしいです。次の作品もどんどん読んでください」 ○この素晴らしい世界に祝福を! 主人公はショック死したゲームオタクの高校生の佐藤和真。女神・アクアを道連れに異世界転生することになり、珍妙な性格・性癖の持ち主の魔法使いや剣士ら複数の美少女とパーティーを組んで冒険を進めていくストーリー。2016年にテレビアニメ化、19年に映画化された。本編全17巻のほか、スピンオフ作品「この素晴らしい世界に爆焔を!」(角川スニーカー文庫)などが発売されている。
福井新聞社