移動時間「1時間半短く」 国道249号「5大難所」に迂回路
●珠洲の「飛び地」解消、住民歓迎 元日の地震で大きな被害を受けた国道249号が年内の全線開通にこぎ着けた。27日、迂回路が開通した珠洲市仁江町と真浦町の間の約2キロ。特に被害の大きかった「5大難所」(国土交通省)の一つとされ、年の瀬まで復旧工事が続いていた。峠を通らず買い物に行けるようになり、住民は「移動が1時間半短くなる」などと歓迎した。国交省能登復興事務所は「復旧に向けたスタートライン」として、年明け以降も本格復旧に向けた工事を進める。 【写真】開通した岬伝いの迂回路を通って輪島方面に向かう乗用車=珠洲市仁江町 「工事の皆さんに感謝や。冬は怖い大谷峠の旧道を通らずに輪島へ買い物へ行ける」。長期避難指示区域である仁江町の自宅を離れ、大谷町の仮設住宅に住む谷内謙一さん(70)は一番乗りで迂回路を走った。 仁江町と真浦町間に開通した幅5メートル、1車線の迂(う)回(かい)路は岬伝いに隆起海岸の上や旧道を活用して築かれた。震災によって、海岸に迫るもろい地質の山肌は至る所で大規模に崩落し、逢坂(ほうさか)トンネルの真浦町側の出入り口を塞いだままだ。 真浦町は、輪島市や能登町を通らねば珠洲市役所に着けない「飛び地」となり、大谷地区の住民が輪島方面に向かうにも、大回りを余儀なくされていた。緊急車両と地元住民の通行に限られるが、海の真横を通る迂回路の開通で、これらの課題が解消した。 国道沿いの揚浜式塩田を運営する会社の中巳出理代表は「自宅から15分で通勤できた従業員が地震後は1時間半もかかっていた。開通してよかった」と喜んだ。 ●水道、電気復旧せず 能登の国道249号の通行止めは全て解消した。ただ、元の暮らしにはほど遠い。現在、定住する住民がいない真浦町で飲食店を営んでいた重政紀美子さん(68)は、迂回路開通で「実家への移動時間が片道1時間以上から10分少しになった」と歓迎するが、夫の定夫さん(69)は「1年待っても水道が来ない。自家発電機がないと電気もない」と憤りを隠せない。 能登半島地震では、土砂崩れなどの影響で、石川県管理道路の最大87カ所が通行止めとなった。9月の豪雨でも再び48カ所が被災して不通となった。復旧を進めた結果、12月26日時点で通行止めは19カ所となった。 能登復興事務所は、能登の大動脈である国道249号で、被害が甚大な「5大難所」のうち、千枚田、大川浜、逢坂トンネルの3区間で、地震で隆起した海岸に盛り土をして応急復旧を図る応急復旧工事を国内で初めて導入した。 ●漂着船どこへ? 迂回路沿いの海岸には2022年1月、ロシア軍が使う標的船に似た鉄製の大型船が漂着していた。夏ごろまで工事関係者が目撃していたものの、27日の開通時には姿はなくなっていた。 陸に揚げるめどが立っておらず、関係者は「船はばらばらになったのか。それともどこかへ行ったのか」と首をかしげた。