【大学トレンド】「海外インターン」大学がサポート 仕事環境の確認、費用負担…
大学担当者が現地を訪問
プログラム開始時は2社だった派遣先の企業や団体が、10年余りで40以上にまで広がった背景にあるのは、卒業生の尽力です。 「現在、派遣先の7割は卒業生の紹介です。紹介を受けたら、まずは私たち大学担当者が現地へ行き、仕事の内容、地域の環境や安全、学生が生活できる場所なのかといったことを確認します。滞在先もホテル、ホームステイなどその地域に合った方法を選び、現地の状況によっては、ホームステイ先の方などに職場までの車の送迎をお願いすることもあります」(住田部長) 現地で必要になる語学の指導や、派遣先の業務に関する事前学習、グループLINEを使った派遣中の24時間サポート、現地訪問など、派遣前から帰国までの支援やフォローも、大学の教員や海外インターンシップ担当の職員が行います。
派遣先企業を招いて報告会
23年12月、東京都市大学世田谷キャンパスで派遣先企業の社員も招いた「海外インターンシップ成果報告会」が開催され、口頭発表やポスター発表が行われました。 同年8月から9月にかけての約20日間、フィリピンの建設会社で地下鉄事業に携わった学部生は「同じ企業に派遣された東京都市大学の4人の学生のうち、都市工学が専門外なのは僕だけ。現地では積極的に質問をすることを心がけながら、書類管理や図面作成に携わりました」と話します。 「現地の所長によると、フィリピンにははっきりした四季がないため、時間の経過に対する感覚が日本人とは大きく異なるそうです。そのことが長期的なスケジュール管理や先を見越した準備をする習慣がないことにもつながっていると聞き、とても興味深く感じました。こういった視点は、現地で働いてこそ得られるものだと思います。海外で働くときには、それぞれの国の環境や習慣を知り、尊重する姿勢が大切なのだと実感しました」
「将来の目標になる人たち」との出会い
同じくフィリピンの建設会社に派遣された大学院生は、海外インターンシップの参加を経て、自分の進路が明確になったと話します。 「もともと建設会社には興味を持っていましたが、実際に仕事を経験したことで、気持ちが固まりました。モノづくりの最前線を支える技術者の皆さんの姿を間近に見られたことや、自分もこうなりたいと思えるような人とたくさん出会えたことは、海外インターンシップに参加した成果だと思っています」 同社に派遣された他の学生からは「貧富の差やインフラの整備不足を目の当たりにしたことで、より自分のスキルを高めたい、困っている人たちの役に立ちたいという気持ちが強まりました」「現場では、高い技術力を持っている人が圧倒的に信頼を得ていました。海外で活躍するためには、語学力や知識だけでなく、実務の経験を積むことも大事だと感じました」といった声が聞かれました。 インターンシップへの参加後は、残りの学生生活との向き合い方にも変化が生じると住田部長は話します。 「インターンシップを終えた後、学生が考えるのは『ここから卒業までに何を学べばいいのか』ということです。卒業後、希望の道に進むのに必要なことは何か、自分に足りないものは何かを考えることが、学びに対するモチベーションを上げ、キャリア教育のベースを形成していきます」