【焼肉カレー】創業100年に手が届きそうな池袋の老舗食堂で食べる、超ボリュームの焼肉カレー:パリッコ『今週のハマりメシ』第161回
ある日、あるとき、ある場所で食べた食事が、その日の気分や体調にあまりにもぴたりとハマることが、ごくまれにある。 【写真】カレーのメニューだけでもたくさんすぎる それは、飲み食いが好きな僕にとって大げさでなく無上の喜びだし、ベストな選択ができたことに対し、「自分って天才?」と、心密かに脳内でガッツポーズをとってしまう瞬間でもある。 そんな"ハマりメシ"を求め、今日もメシを食い、酒を飲むのです。 * * * 護国寺の出版社で打ち合わせが終わり、午後6時。暖かい会議室に長時間いて少しぼーっとなった頭と体に、突然の冬のような気温と、顔が濡れるか濡れないかくらいの霧雨が妙に心地よかった。 家族には、今日の帰りはどのくらいの時間になるかわからないと伝えてあるし、いい機会だ。少し歩いてみよう。そう考え、てきとうな方面へ歩きだす。 当然のことながら、一杯やりたい。もちろん腹も減っている。今歩いているのは、茗荷谷あたりか。となると大塚を経由して池袋まで行くのが、帰路としてはスムーズだろう。なにかめぼしい店はないかな。なんてしばらく歩いていたら、懐かしい場所にたどり着いてしまった。 そこは、「日の出優良商店会」という、東池袋エリアに残る、時代から取り残されたような小さな商店街。池袋で会社員をしていた数年前までは、よく目的もなく散歩に来たものだ。ずいぶんと店は減ってしまったようだけど、それでもちらほらと個人商店が残っている。 そして、ここに来たとなれば、寄らないわけにはいかないだろう。「伊東食堂」に。 「伊東食堂」は、創業1930年。つまりそろそろ開業から100年になる超老舗の大衆食堂だ。この場所に移転する前には池袋のランドマークである「サンシャイン60」の近くにあり、そのころから店に通っていたことは僕の小さな自慢のひとつ。思えば付き合いはもう20年近くになる(と言っても常連というほど頻繁に訪れられてはいないけれど)。 アットホームでリーズナブルで大ボリューム。なにより、どの料理を頼んでも美味しく、きっちりと酒も飲めてしまうという理想的な食堂だ。久しぶりにここで飲めると思うと、がぜんわくわくしてくる。 ひとまずはホッピーセットを飲んで落ち着こう。焼酎濃いめのホッピーが全身の細胞にじわじわと沁みわたる。あ~、今日もいろいろがんばった! ような気がしないでもない。 ところでここ伊東食堂は、メニューの豊富さが尋常でない。酒のつまみになる単品も豊富だし、日替わりボードにも魅力的な品が並ぶ。またそもそも、メニュー表の手書き文字がものすごくかわいくて、それを見るためだけに訪れてもいい店だとも言える。 が、いつものように軽々しく、「メインの食事の前に、つなぎで単品料理をひとつ」なんてノリで頼んでしまうと痛い目を見るのも、また伊東食堂なのだった。いや、あくまで、あまり大食いではない僕の場合だけど。つまり、どの料理も盛りが良すぎるのだ。 そしてまた、カレー好きの僕としては、ここにくるとどうしても食べておきたい。その種類が豊富で、もはやカレー好きのためのワンダーランドと言っても過言ではないのだった。今夜はカレー1本で考えよう。 基本の「カレーライス」が750円で、「コロッケカレー」が850円。その差が100円なことに涙が出てくる。当然揚げものトッピング系は魅力的で、なかでも「メンコロカレー」の間違いのなさといったらないだろう。「オムカレー」も良さそうだし、「カツ丼カレー」「親子丼カレー」「豚キムチ丼カレー」「キムチカツ丼カレー」と、まだ食べたことのない魅惑のメニューがありすぎる。「イカフライカレー」もいいなぁ......。 が、今日はなんだか、「焼肉カレー」(1,000円)な気がする。理由は自分でもわからないけれど、その文字列がなんだか光って見える。よし。すみません、焼肉カレーひとつ、お願いします!
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