「卒乳が遅いと歯並びが悪くなる」ってホント?祖父母世代の“ときに残酷な”育児のアドバイス
周囲の大人は、母親より先に不安を口にしてはいけない
そんな若い母親に、「あそこの子はもう歩くのに、うちはつかまり立ちもまだなんて、大丈夫?」なんて言うなんて、想像を絶するくらい残酷なことだって、知っておいたほうがいい。 祖父母は、母親をリラックスさせるためにいる。彼女の心配に「大丈夫、大丈夫」と言ってやる立場なのに、心配の種を作ってどうするの? もちろん、「絶対におかしい。なんとかしなければ」という事態ならアドバイスをすべきだけど、「ちょっと不安」程度なら口にしないこと。誰よりも、孫の母親自身が心配している。母親が心配を口にしたときは、親身になって聞いてあげよう。杞憂にすぎないと感じたら、経験談で安心させてやればいい。
卒乳は「自分か息子が嫌になったとき」
私の子育て時代(息子は1991年生まれ)、「1歳で乳離れ」が、なぜか鉄則だった。1歳児検診のとき、まだ卒乳を始めてもいないと言ったら、小児科医と栄養士に、ひどく叱られることになった。「歯並びに問題が出るし、だらだら授乳していると犯罪者になるよ」とまで言われたのである。 私は、事前に母乳学の本を読んで、卒乳を「私が嫌になるか、息子が嫌になるか、そのどちらかのとき」と決めていたので、結局4歳まで続けた。
卒乳が遅くても歯並びや人格形成には問題ない
4歳のある日、息子が「ママ、たいへん」と言うので、「どうしたの?」と聞いたら、「ママのおっぱいだと思って飲んでたの、おいらの唾だったよ」と大笑い。 私もつられて笑って、それが卒乳式になった。幸せな、幸せな卒乳だった。ちなみに息子の歯並びは完璧、大人になるまで、虫歯で歯を削ったこともない。今のところ、犯罪者になる気配もない。
乳離れしない息子に「大丈夫」と声をかけてくれた義母
そんな私も、「犯罪者になる」という言いぶりは、かなりショックだったので、黒川の母に言いつけたら、母は、一笑に付してくれたのである。「昔は、末っ子は、いつまでも吸ってたものよ。末の弟なんて、学校から帰ってランドセルしょったまま吸ってたわ。面白いことに、そんな子ほど、出世するのよね」と。 私は、そのときの母の表情と声音を今でも忘れない。黒川の母と一緒に息子を育てられたこと、今、自分が祖母の立場で、あらためてありがたく、胸が熱くなる。どれだけたくさんの「大丈夫」をもらったかわからないから。 文/黒川伊保子 構成/週刊SPA!編集部 【黒川伊保子】 (株)感性リサーチ代表取締役社長。1959年生まれ、奈良女子大学理学部物理学科卒業。コンピューターメーカーでAI(人工知能)開発に従事、2003年現職。『妻のトリセツ』『夫のトリセツ』がベストセラーに。近著に『息子のトリセツ』『母のトリセツ』
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