世界で活躍する日本のビジネスパーソン 〈1〉■ブラジル編■ 「道産子バナナ王」山田勇次さん 一代で業界トップに上り詰めた戦後移民
【問】ジャナウーバ市長に当選した時のことを教えてください。 以前から市長選に立候補するように声をかけられていましたが、断り続けていました。それでも2011年に出馬して、最初の世論調査ではかつて自分が応援していた現職市長の支持率が25%、私はたった2%でした。やると決めたら、妻が率先して選挙運動に参戦してくれて、町中で多くの女性支持者を集めてくれました。また、人口約7万人のジャナウーバに約1千人の従業員がいたため、そのネットワークも選挙戦では有利に働いたと思います。 【問】苦労や印象深い思い出は? 私がブラジル行きを説得した父が渡伯2年で亡くなり、自責の念にさいなまれました。18歳年上の兄とも上手くいかず23歳まで悶々とし、胸中を聞いてもらうために母と日本にいた姉のところに行きました。郷里は10年で大きく発展し、父が売った土地の近所の人から、「運が悪い時に出て行ったね。今なら何億で土地が売れたのに」と言われ、父に申し訳なく思い、「親父が損した分を取り返す」とブラジルで生きる目的を決意しました。
【問】今力を入れている事、今後の展望 オーガニックのバナナ栽培に力を入れています。肥料にキノコ栽培で使用する木のおがくずを使用するととてもおいしいバナナができます。また、販売店がリオ・デ・ジャネイロの大手流通卸会社よりも成長することを目指しています。そのためにより高品質な作物を10種類は生産する必要があります。他にも農薬がなくても病気にならない種類のバナナを栽培し、低価格で供給するアイデアもあります。 社員にはブラスニカ社で働いていることを誇りに思ってもらえる工夫や、各部署で組織内を明るく風通し良くできるような人材の育成についていつも考えています。
【問】これまでを振り返り、今感じている事 自分は運が良かったと思います。父が亡くなって懸命に働いていた時も、「君は働き者だから」と無料で土地を貸してくれる人がいたり、多くの人に助けられてきました。 17歳の時、米国のナポレオン・ヒルが書いた『巨富を築く13の条件』を読み、人間は思いでできているということを強く意識しました。1996年にはサンパウロ市に盛和塾があると知り、稲盛和夫塾長のカセットテープや本に深く感動しました。 全ての仕事をする時は心を高めるのが大事だと思いますし、ブラジルの農業は値段の変動幅は大きく、「経営12カ条」の中にある「燃える闘魂」がなければやっていけません。修行の甲斐あって2004年、京都で開催された第12回全国大会で体験発表する栄誉を与えられ、全国約3500人の盛和塾生の中から最優秀賞までいただきました。 「この土地にバナナを植えても良いか」「この食べ物は食べても良いか」など、私はペンデュラム(振り子)を使用して自分の潜在意識の声も聞くようにしています。そして、人生はやるだけのことをやれば伸びていけると信じています。 ●基本情報 社名:Brasnica Frutas Tropicais(Dosanko Frutas Tropicais Ltda) 創立:1988年8月 事業内容:バナナを中心に各種フルーツの生産、流通、卸売販売 従業員数:2300人 所在地:Av. Brasil, 2635-Dente Grande, Janaúba-MG ウェブ: https://www.brasnica.com.br/
【関連記事】
- ブラジル日本商工会議所協賛企画=現地で活躍する日系企業の今=19=駐在員居住許可サポートのツニブラIMG社 2024年1月6日
- ブラジル日本商工会議所協賛企画=現地で活躍する日系企業の今=18=品質で勝負するティービーピー社 2023年12月16日
- 【山形県人会創立70周年記念特集】山形県人会創立70周年=ロンドリーナで盛大に祝う=吉村知事ら300人が出席 2023年11月22日
- ブラジル日本商工会議所協賛企画=ブラジルで活躍する日系企業の今=16=事業創造型商社GSIクレオスブラジル社 2023年11月18日
- ブラジル日本商工会議所協賛企画=現地で活躍する日系企業の今=12=世界や地元で愛されるイグアスコーヒー社 2023年9月16日