【報知映画賞】「やったー!うれしい!」助演女優賞・吉岡里帆が大興奮 助演は「人生にとってすごく意味がある」
今年度の映画賞レースの幕開けとなる「第49回報知映画賞」の各賞が25日、発表された。作品賞は藤井道人監督(38)の「正体」が受賞した。同作からは主人公の無実を信じる出版社の社員を演じた吉岡里帆(31)が助演女優賞に選ばれ、主演男優賞と合わせて3冠となった。 【画像】「報知映画賞」受賞者一覧! * * * 仕事帰りの車中に吉報が届いた。所属事務所の社長から受賞を聞いた吉岡は「やったー! うれしい!」と大興奮。その後、「正体」のプロデューサーからマネジャーに着信が入った。運転中のマネジャーの代わりに吉岡が名乗らないまま報告を受け、しばらく話してから「吉岡でした!」とネタばらし。受賞の喜びに加えてドッキリが成功して車内は幸せムードに包まれた。 演じた安藤沙耶香は出版社の編集者。横浜流星演じる主人公が逃亡犯とは知らずに出会い、心を通わせるうちに疑念が芽生えるが、無実を信じる役どころだ。「人の心が解けていくような、人間の一番きれいでピュアな感情を見せたいと思いました」。言葉では説明できない感情の移り変わりも繊細に表現して「他者を信じる」という作品のテーマを見事に体現した。 助演での受賞は「自分の人生にとって、すごく意味がある」と喜びをかみ締めている。「デビュー当時から『主演の役者さんが輝くためには、どうすればいいだろう?』と考えてきました。『そのスタンス、悪くないよ』って言ってもらえた気がして報われました」と声を弾ませた。 京都市出身で、幼少期から太秦の東映京都撮影所が遊び場だった。「時代劇のセットや忍者屋敷が大好きで、非現実的なんだけど、手作り感がある夢の世界にワクワクしました」。家族そろっての映画観賞も大好きで「感動を共有することで心がつながる。映画にはロマンを感じます」と思いを込めた。 女優を目指すきっかけも撮影所だった。高校卒業直後の春休み、岡田准一主演の映画「天地明察」(2012年公開)にエキストラとして参加。「映画づくりに情熱を燃やす現場の雰囲気に憧れて、この世界に入りたい」という衝動がわき起こった。18歳からの約2年間は歯科助手、居酒屋、スーパー、ホテルの配膳などアルバイトを掛け持ちしながら、深夜バスで東京までオーディションや演技講習に通い、夢を追った。 女優としての強みは「自分の足りなさを知っていること」と語る。「役をいただいて必要とされることは奇跡的なこと。だから、誰よりもその作品のファンでありたいと毎回、心に決めている。それがなくなったら自分の価値はないと思っています」。全国区の人気女優となっても、18歳当時の初心を決して忘れない。作品に対する真摯(しんし)な姿勢が、助演女優賞として結実した。(有野 博幸) ◆正体 凶悪殺人事件の容疑者として逮捕され、死刑判決を受けた鏑木(横浜流星)は脱獄に成功。変装し正体を隠しながら逃走を続ける鏑木は、日本中の話題の的となる。刑事の又貫(山田孝之)は、鏑木に接触した人々を取り調べるが、まるで別人のような人物像が浮かび上がる。鏑木の目的とは―。 ◆吉岡 里帆(よしおか・りほ)1993年1月15日、京都府生まれ。31歳。2015年度下期のNHK連続テレビ小説「あさが来た」で注目され、17年のTBSドラマ「カルテット」などに出演。主な出演映画は「見えない目撃者」(19年)、「ハケンアニメ」(22年)、「アイスクリームフィーバー」(23年)など。26年のNHK大河ドラマ「豊臣兄弟!」に出演する。 ▼助演女優賞 選考経過 三吉彩花と2票差の接戦となったが、吉岡に軍配。「普通の人の善良と真心が全身に染み渡った」(見城)、「普通を演じることが一番難しい。今年は吉岡里帆さんでしょう」(LiLiCo)。 ◆選考委員 荒木久文(映画評論家)、木村直子(読売新聞文化部映画担当)、見城徹(株式会社幻冬舎代表取締役社長)、藤田晋(株式会社サイバーエージェント代表取締役)、松本志のぶ(フリーアナウンサー)、YOU(タレント)、LiLiCo(映画コメンテーター)、渡辺祥子(映画評論家)の各氏(五十音順)と報知新聞映画担当。
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