愛するもののために命をかける! Netflix、Prime Video、U‐NEXTで今週観るべきおすすめ配信ドラマと映画(2024.06.21)
世界で1位を獲得した韓国ドラマ『ソンジェ背負って走れ』、平成レトロなテック系伝記映画『ブラックベリー』、RPGゲームをベースにした話題作『フォールアウト』、待望の新シーズン配信開始の『ザ・ボーイズ』をピックアップ。恋のヒーローから悪のヒーローまで、愛をかけて闘う姿から目が離せなくなるので徹夜を覚悟して! 【写真を見る】今週末に見るべき他3作品の写真をチェックする
──『ソンジェ背負って走れ』 久々にやってきた、これぞ韓ドラな王道ラブコメ 米「TIME」誌が2024年最高の韓国ドラマと評したことで話題の本作。主にアジア系ドラマを配信するプラットフォームRakuten Vikiで、アメリカだけでなくカナダやフランス、ドイツ、ブラジル、メキシコ、オーストラリア、インドなど世界133カ国で1位を獲得した。ポップアップイベントは長蛇の列で主題歌(OST)はチャートを席巻するなど、韓国で社会現象となった人気ドラマだ。 事故で下半身不随となり自暴自棄になっていた高校生のソル。しかし音楽グループECLIPSEのソンジェからかけられた言葉により、再び生きることに前向きになる。社会人になるまでソンジェ一筋の推し生活を送っていたソルだったが、ある日ECLIPSEのコンサートから帰宅すると、ソンジェが自殺したというニュースが飛び込んでくる。病院へ駆けつけようと車椅子を走らせるソルだったが、オークションで手に入れたソンジェの私物の腕時計を川に落としてしまう。腕時計を探そうと川に飛び込むと、なぜかソルは過去へタイムスリップしていた。ソンジェの未来の運命を変えるために、ソルは過去を変えようと奮闘するのだが……。 ■一気にスターダムを駆け上がったピョン・ウソク 本作は、タイムリープ、偶然の出会い、交通事故といった王道韓国ドラマの必須要素が全てつまった恋愛コメディだ。大げさなリアクションや、度重なる大雨、なぜか毎回ばったり出くわす主人公たちなど、現実ではあり得ない設定の数々を盛り込んでいるので、慣れるまで少々違和感があるかもしれないが、エピソードを重ねるごとに、それらが気にならなくなるほど沼落ちするはずだ。 そんな本作の魅力のひとつがソンジェを演じたピョン・ウソク。2016年に俳優デビューするも、なかなか良役に恵まれず、2020年に『青春の記録』でパク・ボゴムのライバルを演じたことで注目が集まり、本作でようやく主演を飾った。劇中では、高校3年生から30代までのソンジェを演じているが、今年33歳になるとは思えないほど、高校生役でも違和感はない。また高校時代は水泳選手という設定のソンジェだが、まるで本物の水泳選手と見まごうほどの筋肉は圧巻だ。相手役であるソルを演じたキム・ヘユンは、『SKYキャッスル~上流階級の妻たち~』で主人公の娘を演じ人気に火が付き、『女神降臨』や『スノードロップ』に出演した。このふたりが相手を思いやるあまりにもまっすぐでピュアな気持ちに、鼻白んでしまいそうになるが、ふたりが醸し出す相性抜群な雰囲気と演技力により、自分の大切な人を思いやることは当然のことで、決して恥ずかしいことじゃないのだと再認識させてくれる。 ソンジェは生きることを諦めていたソルに、「今日を生きてほしい、雨が降っていたら止むのを待ってもう一日、生きてほしい」と語りかける。毎日生きていれば悲しいことや辛いことに必ず出くわす。そんな時に、ソンジェの言葉を思い出せば、雨が止むまで少しだけ頑張ってみようと思えるはずだ。ストレスなく観られるのも本作が人気となった理由のひとつにあげられるだろう。クライムスリラーや復讐ものが主流となっている昨今の韓国ドラマ界に現れた久々の王道ラブコメで、一日の終わりを幸せな気持ちで締めくくってみてはいかがだろうか。 『ソンジェ背負って走れ』 U-NEXTで独占配信中 ──『ブラックベリー』 携帯デバイスの栄枯盛衰を描いたテック系伝記映画 1999年に登場し、主に北米で一斉を風靡した携帯型端末「ブラックベリー」の栄枯盛衰を、Jacquie Mcnish 著の「Losing The Signal」をベースに描く。リサーチ・イン・モーション(RIM)の創業者であるマイクとダグは、PocketLinkという新商品をプレゼンするためにジム・バルシリーの元を訪ねていた。専門用語だらけでオタク全開のプレゼンだったため、ジムには響かずあえなく退散。しかしふたりは気にする様子もなく同僚たちとオフィスでゲームに興じていた。ところが後日、ジムが突然訪ねてきてCEOになって商品を売ってやると言い出す。あっけにとられていると、実はRIMには負債があり、このままだと会社が危ういことが判明し、渋々ジムを仲間にすることに。ジムの営業力とマイクの天才的発想力により、ついにブラックベリーは商品化され、瞬く間にAppleやGoogleと肩を並べる企業になる。しかし、2007年にAppleがiPhoneを発表すると、一気に形勢は逆転していく。 ■圧倒的なスピード感で描く、オタクたちの狂宴 デヴィット・フィンチャー監督の『ソーシャル・ネットワーク』(2010)やダニー・ボイル監督の『スティーブ・ジョブス』(2015)など、史実を元にしたIT系伝記作品は数あれど、本作は”成功から学ぶ”タイプの作品ではない。当時の開発速度や時代の素早い移り変わりをそのまま作品に落とし込み、圧倒的なスピードで物語が展開。たった10年ほどの間に起こったIT企業の興廃をダイナミックに描き出す。 キーボードへのこだわりを捨てきれなかったマイクと、理念より利益を優先したジムは破滅への道を進む。一方、一見頑固に見えつつも最も柔軟だったのはダグで、彼らにあっさりと見切りをつけ、ふたりとは別の道を歩んだ。最もこだわりの強いオタクに見えたダグだが、意外にも最も融通がきかない別の意味でのオタクはジムだったのだ。ダグ役を演じたのは監督のマット・ジョンソン。映画オタクでもあるダグは、いつも映画Tシャツを着ており、そんな個性あふれるキャラクターメイクも本作の見どころのひとつだ。回線をもつAT&Tやベライゾンとの攻防やデータの容量の問題を見ていると、ガラパゴス的進化をしていた日本のガラケーも意外と優れていたのだと気付かされる。そして改めてスティーブ・ジョブスの先進性に驚かされるだろう。iPhone誕生前夜のテック企業の狂乱はエモく、平成レトロな雰囲気を存分に味わえる作品だ。 『ブラックベリー』 Netflix、U-NEXT(レンタル)、Prime Video(レンタル)などで配信中。 ──『フォールアウト』 ジョナサン・ノーランが手掛けるディストピアSF Prime Videoで配信されている『フォールアウト』は核戦争後のディストピア世界が舞台のRPGゲームを実写化した作品。SFドラマ『ウエストワールド』を手がけたジョナサン・ノーランが製作総指揮に名を連ね、3つのエピソードで監督も務めている。舞台は、2077年の核戦争で文明が壊滅し、人類の大半が死滅したアメリカ。なんとか生き残った人々やその子どもたちは、地下の核シェルター「Vault」で規律を守り秩序に則った生活を送る集団、地上で賞金稼ぎをしながら生きている荒くれ者たち、横暴な軍事組織「BOS」の3つの組織に所属し、ギリギリのバランスを保ちながら命をつないでいた。ある時、平和だった核シェルターから父親がさらわれ、娘のルーシーは父を探すために初めて荒廃した外界「ウェイストランド」に出る。時を同じくして科学者ヴィルツィヒは研究所から脱走し、「BOS」や賞金稼ぎから追われる身となる。「Vault」出身のルーシーと、「BOS」のマキシマス、賞金稼ぎのクーパーの3人の運命は交錯し、事態は思いもよらぬ方向へ動き始める。物語の鍵となる重要な役であるルーシーの父・ハンク役をカイル・マクラクランが演じた。 ■そういうことだったの!?という驚きの展開 ゲームを実写化した本作であるが、実は主人公であるルーシーは、ゲームには登場しない新キャラクター。ストーリーにも大胆な脚色がなされているので、ゲームをプレイしたことがなくても存分に楽しめる。とはいえBOSのロボット型兵器や核シェルターのデザイン、クリーチャーなど、ゲームをベースとしたオリジナリティ溢れるプロダクションデザインは本作の魅力だ。核戦争が起こるのは2077年だが、人々は1950年代風の生活様式で過ごしているので、設定を知らないで見ると時代感覚が混乱するだろう。このレトロフューチャーな世界観は劇中の音楽にも踏襲されており、ナット・キング・コールの「I Don't Want To See Tomorrow」や「Orange Colored Sky」などの往年の名曲がストーリーにマッチするタイミングで流れ、作品を盛り上げる。 中盤までは利権を求めて別の組織に所属する人々同士が争うストーリーに思えるが、本作の本質は奥深くそんな単純なものではない。核戦争がおきた理由や、核シェルターの隠された事実に思わず背筋が凍る。魅力的なキャラクターとユニークな世界観が織りなすエンタメ作品だが、しっかり社会派作品としての側面も備え、現実社会を痛烈に皮肉っている。シーズン2の製作も正式発表されたので、今のうちに追いついておくのがおすすめだ。 『フォールアウト』 Prime Videoで独占配信中 ──『ザ・ボーイズ』シーズン4 まるで社会の縮図な悪徳スーパーヒーロー作品 DCコミック傘下の出版社から出された同名のコミックが原作。2019年7月にシーズン1が配信されると瞬く間に人気シリーズとなり、2024年6月13日にシーズン4が配信開始された。巨大企業「ヴォート」は、空を飛ぶ、早く走る、怪力といった特殊能力のあるスーパーヒーローを雇用し、人命救助や凶悪事件を解決するという人道的活動をする一方、グッズ販売や映画製作などで巨万の富を築いていた。ヒーローたちの精鋭は「セブン」と呼ばれ、絶大な人気を誇っていたが、彼らの度重なる無謀な破壊行動によって被害を被った一部の市民は彼らの活動に懐疑的だった。「セブン」に恨みをもつブッチャーは、スーパーヒーローに彼女を殺されたヒューイを勧誘し、「ザ・ボーイズ」を結成。「セブン」の真の姿を暴こうと、「ヴォート」社を調べると驚きの事実が明らかになるというのがシーズン1の始まりだ。ヒューイを演じるのは、デニス・クエイドとメグ・ライアンの息子であるジャック・クエイド。 ■最終章へ向けて再始動、あのキャラも登場! 救世主だと思っていたヒーローが、実は正義の味方のフリをした人類最大の脅威だった、という本作。DCコミックのスーパーマンとマーベルコミックのキャプテン・アメリカを足して割ったような見た目のホームランダーは、ブロンドに染めた髪や乱発する不適切発言により胡散臭さ満載。その無謀な破壊行動によりいくつかの裁判を抱えているが、熱狂的なファンに支えられているという姿は、某国の元大統領を彷彿とさせる。 悪の枢軸であるホームランダーだが、シーズン4ではそんなホームランダーも老いを感じ、手下であるAトレインやノワールも自分たちのやっていることに疑問を持ち始める。能力者であることを隠して副大統領候補に立候補しているニューマンや息子であるライアンを新たなヒーローに仕立てようとするホームランダーに、余命数ヶ月となったブッチャーは、自分に残された時間で、正しいことをしなければならないと「ザ・ボーイズ」に再び団結を呼びかける。次作のシーズン5でフィナーレを迎えると発表されており、最終シーズンに向けて大きな節目となるシーズン4。グロテスクな描写や不適切な表現も多数あるので、鑑賞の際は注意してほしい。 『ザ・ボーイズ』シーズン1~4 Prime Videoで独占配信開始
編集と文・遠藤加奈(GQ)