「石川祐希と高橋藍が合流すると出番が減って…」男子バレー“13番目の選手”富田将馬(27歳)の再出発「楽しかった小川&ラリーとのパリ生活」
開会式後の深夜にハプニング
初戦前夜、現地で開会式が行われた日にはアクシデントにも見舞われた。3人が暮らすのはホテルではなく、シェアハウスタイプのマンション。認められた民泊施設ではあったが、そこで暮らす住人もいる。開会式を終えた深夜1時頃だったか。玄関のドアを激しく叩き続ける音に、翌朝の試合に備えて就寝していた3人も飛び起きた。 「どうする? これ、やばくない?」 外を見ることもできず、離れた場所に泊まる日本代表のスタッフに電話で連絡した。結局、酔っぱらって部屋を間違えた住人の仕業だったのだが、翌朝のドイツ戦は朝9時開始のため、それから寝られたのは2~3時間程度。寝不足のまま会場に着いた。 「さんざんだったよな」と試合前は軽口を叩いていたが、第1セットの序盤、ドイツ代表のギョルギ・グロゼルのサービスエースなどで連続失点を喫し、日本が2対9と劣勢スタートを強いられると、一気に目が覚めた。 そして、メンバーから外れた時以上の悔しさが込み上げた。 「崩されたのが攻撃ではなくてサーブレシーブだったので、『自分があそこにいたら助けられたんじゃないか』と思って。もどかしさを人一倍感じていました。日本でも期待されているのを知っていたので、見ている方々には『何で格下に』と思われるかもしれないけれど、僕らからすれば強い相手だとわかっていたからこそ、勝って『やっぱりドイツは強かった』と言いたかった。今思えば、あの試合がすべてでした」 いつ出番が来るかはわからない。何があっても対応できるように準備を続けていたが、その時はやってこない。どれだけ試合を重ねても、その悔しさは消えぬまま、日本代表にとって最終戦となったイタリア戦を迎えた。 試合によって見る場所は違う。イタリア戦はすでに大会を終えた女子日本代表と共にスタンド席の一角で見守ったが、第3セットの24点目を得た瞬間に勝利を確信し、喜びを分かち合うべく、自身と同様にパスを持つスタッフと共にスタンドから降り、コートの隅で待機した。まさか落とすとは思わなかった第3セットを失っても「大丈夫、ここで第4セットも見よう」とその場に残り、結局、第5セットを終えた時も同じ場所に立ち続けた。 目の前には、勝利の喜びを爆発させるイタリアの選手たちがいた。
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