女主人がひとりで切り盛りするラーメン店「純麦」に伊丹十三監督の『タンポポ』が重なった
日本初の料理評論家、山本益博さんはいま、ラーメンが「美味しい革命」の渦中にあると言います。長らくB級グルメとして愛されてきたラーメンは、ミシュランも認める一流の料理へと変貌を遂げつつあります。新時代に向けて群雄割拠する街のラーメン店を巨匠自らが実食リポートする連載です。 山本益博のラーメン革命!
日本初の料理評論家、山本益博さんはいま、ラーメンが「美味しい革命」の渦中にあると言います。長らくB級グルメとして愛されてきたラーメンは、ミシュランも認める一流の料理へと変貌を遂げつつあります。新時代に向けて群雄割拠する街のラーメン店を巨匠自らが実食リポートする連載です。
「店舗の構えの写真」や「住所」の公開はご法度
噂のラーメン「純麦」へ出かけてきた。ご存知の方も多いと思うが、店の席に着くのが容易じゃない。初めて自分でネットの「予約代行業」を通じて、席の予約をした。その後の案内によれば、「店舗の構えの写真」や「住所」の公開はご法度。その掟を破れば「移転費用を請求します」とのこと。大通りに出店して、電飾華やかに店をアピールするラーメン屋とは真逆の発想の「クローズド」な店である。 私は、どんなラーメンか何も知らずに、店名の「純麦」に惹かれた。「純麦」からは、シンプルでピュアなイメージが浮かぶ。ラーメン店のネーミングとしては傑作の部類に入るのではなかろうか。ビールの「金麦」よりいい。噂の大森「麦苗」出身で、女主人ひとりのラーメン店というだけで、そそられた。
すぐに思い起こしたのが、伊丹十三監督の映画『タンポポ』である。 1960年代、英国の映画でピーター・オトゥール主演の『ロードジム』に出演するため、長期ヨーロッパ滞在をし、それをエッセイにまとめた「ヨーロッパ退屈日記」は、ダンディズムとスノビッシュに溢れた、一種貴族趣味の本で、例えば、当時まだ世に知られていなかったルイヴィトンの鞄に触れたエッセイで、それをハサミで切り取り「下駄の褄皮」にして履いていた話を読んだ時は、なんとキザで小粋なんだろうと、びっくりした。