「そういう意見もある」石破首相、核禁会議への参加言及せず ノーベル受賞の被団協と面会
石破茂首相は8日、ノーベル平和賞を受賞した日本原水爆被害者団体協議会(被団協)の田中熙巳代表委員(92)らと官邸で面会した。被爆の実相を世界に発信してきた活動に謝意を伝えた一方、被団協が求める3月の核兵器禁止条約(核禁条約)締約国会議へのオブザーバー参加は明言しなかった。政府は他国の状況などを踏まえ、慎重に見極める構えだ。 「ノーベル平和賞受賞は極めて意義深い。長年の努力に心から感謝する」。首相は面会の冒頭、田中氏らにこう語った。 ただ、田中氏は約30分の面会後、記者団に「収穫のある面会とは受け止めていない」と強調。首相が防衛や安全保障への考え方などを披露する「独壇場」になってしまったとして「反論する時間は設けられていなかった」と苦言を呈した。 核禁条約をめぐっては、公明党や立憲民主党などもオブザーバー参加を主張。首相は昨年の臨時国会で、オブザーバー参加している他国の対応を「検証する」と答弁し、従来の政府方針より踏み込んでいた。 このため今回の面会でも首相の発言が注目されたが、同席した公明の斉藤鉄夫代表によると、首相は参加論について「そういう意見もある」と述べるにとどめた。斉藤氏は記者団に「今回の場で参加表明があれば一番よかったと思う」と漏らした。 核禁条約は核兵器の開発や保有、使用などを全面禁止する内容で、2022年に第1回締約国会議が開かれた。ただ、日本政府は米国の拡大核抑止(核の傘)を維持しつつ、核保有国と非核国の橋渡しを通じて核廃絶を目指す立場だ。このため核保有国が加わらない核禁条約には慎重で、191カ国・地域が批准する核拡散防止条約(NPT)を重視している。 林芳正官房長官は8日の記者会見で核禁条約に関し「拡大抑止の信頼性を確保し安全保障上の脅威に対処していく大前提に立ち、唯一の戦争被爆国としての歴史的責務もどう果たすかという難しい課題の一環だ」と指摘。その上で「現実的で実践的な取り組みとしていかなる対応が適当か予断なく検証していく」と説明した。(永井大輔)