久保建英がレアル移籍壮行セレモニーでのブーイングに“神対応“できた理由
本音ではバルセロナでの挑戦を継続したかったのだろう。しかし、国際移籍で原則禁止されている18歳未満の外国籍選手を獲得・登録していたとして、久保を含めた複数の下部組織所属選手が国際サッカー連盟から公式戦に出場できないペナルティーを科され、解除される見込みも立っていなかった。 断腸の思いとともに帰国したことで、久保本人をして「つらい」と言わしめる時期をすごした。多感だった少年を支えてくれたのは、FC東京の下部組織やトップチームの仲間たちの存在や励ましだった。だからこそ、FC東京の一員でいられた時間を飛躍への糧に変えると宣言した。 「これからはFC東京の久保建英ではなくなりますが、FC東京に在籍した選手として、東京としての誇りをもって、つらいこともあるかと思いますが、そのたびにいまの(セレモニーの)動画をもらえると思うので、見返して元気を出します」 FC東京U-15むさしに加入したときから口頭で、プロ契約を結んだ2017年11月1日からは契約書上で、契約満了日を「2019年6月4日」としてきた。日本で可能な限り力をつけて、国際移籍が可能になる18歳になったときに満を持してヨーロッパへ再挑戦する――描き続けた道を歩み始めるスタートラインに涙は似合わない。久保はセレモニーの最後まで笑顔を輝かせ続けた。 「東京に来てから3年半、4年くらいでしたが、非常に(ヨーロッパへ)行きたくなくなるくらい濃い時間だったと思いますし、苦渋の決断ではありましたが、自分の決断に誇りをもって、また東京での時間を自分は一生忘れないので。本当にありがとうございました」 旅立ちのあいさつを終えると場内をフェンス沿いにゆっくりと一周し、あらためて感謝の思いを届けた。最後にFC東京の選手たちが待っていたゴール裏で、ファン・サポーターに見守られながら胴上げで4度宙を舞った。セレモニーを見届けた大金社長が思わず目を細める。 「(移籍が)決まってから全然会っていなかったんですけど、めちゃくちゃいい顔をしていましたよね。ギラギラした感じがあるというか。(セレモニーを)やれて本当によかった」 久保が退団した後のFC東京は、リーグ戦でともに無得点で連敗を喫していた。2点差以上で敗れていたら、第8節からキープしてきた首位をマリノスに奪われていた大事な首位攻防戦で、痛快な逆転勝利をもぎ取って前半戦の首位ターンを決めた。 久保の代わりに先発し、左サイドハーフに入った韓国代表のナ・サンホ(22)が同点弾をゲット。自慢の2トップ、ディエゴ・オリヴェイラ(29)と永井謙佑(30)が、観戦していた久保に「後は任せろ」とメッセージを送るかのように、ともに8試合ぶりとなるゴールを決めた。 ファン・サポーターからの声援に加えて、FC東京の盟友たちからも最高の“餞別”を受け取った久保は、現地時間7月8日の集合・始動に合わせて近日中に渡西。翌9日からスタートするカナダ・モントリオールでのキャンプを含めて、プレシーズンの前半はトップチームに帯同する予定だ。 (文責・藤江直人/スポーツライター)